にもかかわらず、相手から「冗談じゃないか」と言われると、人はなぜかその言葉が「冗談ではない」ことを自分のほうから説明しなければいけないかのように錯覚してしまうことがある。そして、時には口をつぐんでしまうのだ。
差別は冗談と結び付き、冗談は笑いと結び付く。「ネタでしょ」という切り返しは、言葉の表面とその「真意」とのズレを理解するよう受け手の側に求め、傷つくことでも怒ることでもなく、ただ笑うことを求める。
本当は傷ついていても、怒っていても、そう受け取る自分が間違っているのではないかと自らを疑い、ぐっとのみ込むことを求めるのだ。
「冗談じゃないか」──そう笑いながら黙ることを受け手に求める言葉がある。笑う必要もなければ、黙る必要もない。笑うべきでもないし、黙るべきでもない。
<2021年3月9日号掲載>
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