<大江が見たK-POPアーティストの実像と、そもそも海外市場を視野に入れてこなかったJ-POP、BTSとピコ太郎の成功が意味するもの>

最近、アメリカ人の友人の娘さん(12歳)がBTSに夢中。「かっこいい」と目を輝かせる。今やK-POPは「世界で売れる音楽」だ。

思えばジャニーズをテキストにK-POPは始まった。日本への憧憬から2000年代に日本市場に進出したK-POPは、次は欧米に標準を合わせる。K-POPはマーケットでてっぺんを取るためにつくられ、BTSはその最も成功した例だ。

K-POP界の人は生き残りを懸けて戦うというか、自国を背負う感覚で音楽をやっている。デビュー時には既にダンスも歌もクオリティーが高く、顔のお直しも完了している。

一方の日本は、宝塚に代表されるようにファンと一緒に成長する過程を楽しむ独特のスタイルだ。少しぐらい「へたうま」のほうがファンには応援しがいがある。

K-POPはグループでも常に「ソロ」で歌い、日本のアイドルによくある合唱スタイルではないため常に個人のスキルが試される。BTSが本番直前まで血のにじむような準備をしている話は僕にも漏れ伝わってくる。

世界(欧米)で売るため、BTSの世界的大ヒット曲で全編英語詞の「Dynamite」はイギリス人のソングライター2人が共同で作った。彼らの母国の市場は、決して大きくない。だからこそ世界を目指す。これが自国の代表選手として飛び出す韓国アーティストの実像だ。

BTSを売り出すとき、全米で(※)女性ファンたちが草の根で宣伝しラジオでのオンエアにつなげ、トップへ担ぎ出したのは有名な話だ。官民一体の音楽PR、国際社会でのアイドルマネジメントの「完成形」とも言える。

日本は世界第2の音楽市場なので、国内だけでリスクを背負わずに経済循環できる。そもそも海外市場を視野に入れていないフシがある。

アメリカから見れば大江千里は「BTSの火付け役」?

とはいえ、うれしいことにアメリカではJ-POPには常にマニアックなファンがいる。僕が音大時代に参加したビッグバンドはモーニング娘。や浜崎あゆみを好んで演奏したし、バンドの発起人はJ-POP「通」だった。最近では日本のシティーポップ、例えば松原みきの「真夜中のドア」や、竹内まりやの「PLASTIC LOVE」などが人気だ。

もともとJ-POPには幅広いジャンルがあり、キャッチーなアイドルソングだけじゃない「振れ幅」を持つ。逆に言うとそれが世界には分かりづらい。世界は英語じゃないと理解できないので、ピコ太郎の切り口は逆に新鮮だった。「上を向いて歩こう」は今も名曲だし、人種を超え、J-POPが世界でヒットする時代は必ず訪れると思う。

僕が19年にNBCテレビに出た時、出演者側へのカンペに「BTSの火付け役になった元ポップアーティスト」と出た。僕は違うと抗議したが、アメリカから見れば日本も韓国も大差ない。K-POPがアジア音楽への垣根を取り払い、J-POPも出ていくチャンスの分母が広がった。

クオリティーの高いJ-POPは「売り上げ、売り込み、国を背負い」ではないが、いい曲は必ずヒットする。シティーポップの台頭が僕たちに宝の存在を気付かせてくれていると、僕は考える。

※一部誤解を与える表現があったため訂正しました(2022年2月3日20時15分)。