政府は労働力不足の解消や年金の持続可能性の向上のために定年延長を含めた高齢者の雇用延長政策を推進している。しかしながら、多くの企業では人件費負担を回避するために、定年前に比べて大きく処遇水準を下げた継続雇用制度を選択・実施しているのが現実である。問題はただ長く働くだけでは生産性は上がらず、企業にもプラスにならないことである。最近は継続雇用制度の問題点を認識し、従業員の働く意欲や生産性を引き上げるために既存の継続雇用制度を定年延長に切り替える企業が少しずつ増え続けてている。年金の支給開始年齢が延ばされたので、仕方なく労働市場に参加するより、働く意欲を持って働いた方が企業にとっても利益になることは確かである。従って、今後は年齢を理由に高齢者が労働市場で差別されないように制度や意識を改善することが重要であり、そのためにも現在政府が推進している「同一労働同一賃金の原則」が高齢者にも適切に適用される必要がある。

また、高齢者定年延長にあたっては、個人差はあるが、視力や聴力など身体的な老化も顕著になってくることから、より多くの職種・職務の選択肢を考えていくことが望ましい。その一環として、50代前半から、定年後を見据えたキャリア形成を支援する制度の実施が求められる。さらに、企業はテレワークや短時間勤務など多様な働き方に対する人事管理および人事評価制度の一層の整備を推進する必要がある。すべての企業や個人に一律的に適用される定年制度より、企業や個人の状況に合わせたより多様な定年制度の実施を推進することが重要である。

※当記事は「70 歳雇用推進の背景と今後の課題」基礎研レター2019年6月26日、「韓国では65歳、日本では70歳、定年延長の議論が本格化」ニューズウィーク日本版2019年7月18日を修正加筆したものです。

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