<問題をできるだけエスカレートさせ、譲歩を取引材料にする──突然の方針転換は、欧米各国からの軍事、経済両面での支援を引き出すための外交手法だ>


・トルコは聖典コーランの焼却を合法化したスウェーデンがNATOに加盟することに反対してきたが、一転して賛成に転じた。

・この方針転換は、対立をエスカレートさせ、要求を引き上げておいて、譲歩することを取引材料にする外交手法といえる。

・それによってトルコは欧米各国から軍事、経済の両面での支援を期待しているとみられる。

トルコがスウェーデンの加盟を支持したことで、NATO(北大西洋条約機構)は32カ国体制になる道が拓けた。

    

「サプライズ」の方針転換

今月初旬に筆者が示した「スウェーデンのNATO加盟はほぼ絶望的」という予測は、完全に外れた。

それまでスウェーデンのNATO加盟に強硬に反対し、外交的に断絶寸前まで至っていたトルコが7月10日、スウェーデンの加盟承認に向けた手続きを約束したからだ。

NATOのストルテンベルグ事務局長は「歴史的な日だ」と述べ、アメリカのバイデン大統領もこれを称賛した。

とはいえ、アルジャズィーラが「サプライズ」と呼んだように、筆者のみならず多くのウォッチャーにとってエルドアンの決定は予想外だった。

トルコはもともとスウェーデンがトルコ国内で分離独立を要求するクルド人などを難民として受け入れていることを「テロリストを擁護している」と批判し、NATO加盟に反対してきた。さらに今年4月、スウェーデンで聖典コーランを抗議デモのなかで焼く行為が法的に認められたことで、両国関係は極度に悪化していた。

そのなかでトルコは突然、方針を転換したのだ。

予測を誤ったのを認めるのは無念だが、スルーすることもできない。

急転直下の方針転換はなぜ生まれたのか。

結論的にいえば、トルコのエルドアン大統領はスウェーデンのNATO加盟を認めるのと引き換えに、欧米からさまざまな協力を引き出そうとしたとみられる。

アメリカからF-16提供

例えば、スウェーデンの加盟が一つの焦点になったNATO首脳会合に先立って、バイデン政権で外交・安全保障を担当するサリバン補佐官は「議会との協議を踏まえてトルコに戦闘機F-16を提供する用意がある」旨を発表した。

ロッキード・マーティン製F-16はアメリカ軍の主力戦闘機の一つ。 

これまでエルドアン政権は40機のF-16購入を希望していたが、アメリカ議会の反対によって実現してこなかった。トルコがNATO加盟国でありながらロシアから地対空ミサイルS-400を購入したことに加えて、スウェーデンのNATO加盟に反対していることが主な理由だった。

譲歩をF-16購入の取引材料に
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