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マスメディアへの信頼度が高い日本は「思想統制」されやすい国?

2025年3月26日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

受け手の側に、情報を批判的に吟味する力が備わっていればいいが、こういう資質が日本人にどれほどあるかは疑わしい。学校教育でも、子どもの批判的思考力を促すような教育はあまりされていない。

横軸に「授業中、生徒の批判的思考を促す」と答えた中学校教育の割合、縦軸に「報道機関は信頼できる」と答えた国民の割合をとった座標上に、37の国を配置すると<図2>のようになる。


 

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横軸、縦軸双方のデータがある37カ国の配置図だが、日本の位置は他国と大きく離れている。左上の極地だ。批判的思考が育まれない一方で、報道機関への信頼度は高い。言い方がよくないが、最も思想統制されやすい国なのかもしれない。

メディアが一方的に大量伝達する情報によって、思想や心理を簡単に操作される危険がある。内閣府の『少年非行に関する世論調査』(2015年7月)によると、国民の8割近くが「非行は増えていると思う」と答えているが、統計で分かる事実はその逆だ。センセーショナルな少年犯罪報道を鵜呑みにしているのだろう。このように歪められた世論に押されて政策が決まるとしたら恐ろしい。

インターネット上ではフェイクニュースもはびこっているが、北欧のフィンランドでは、こうした偽情報に騙されないメディアリテラシーを鍛える教育が実践されているという。メディアで大量伝達される情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考える。情報化・大衆化が進んだ現代社会では、この当たり前のことが重要となる。学校の情報教育では、この面にも重きを置く必要がある。

<資料>
『第7回・世界価値観調査』(2017~2022年)
OECD「TALIS 2018」

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