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新型コロナウイルス

ウイルス発生源をめぐる米中対立と失われたコロナ封じ込め機会

2020年4月22日(水)15時15分
小谷哲男(明海大学教授・日本国際問題研究所主任研究員)

このように、米国政府は超党派で中国との国際保健分野での協力を拡大してきた。もちろん、中国共産党の一党独裁という制度のため、中国との協力を行う上で情報の透明性は常に付きまとう問題である。特に、習近平体制は国内の監視体制と情報統制を強化してきたため、感染症問題に関して透明性を期待することはより困難である。新型コロナウイルスに関する誤った情報を中国政府が拡散することにも、毅然と対処する必要がある。一方で、パンデミックに関して中国の責任を追及することは、中国からの情報提供をますます難しいものとするだけである。中国の責任を追及するのではなく、中国とともに実態を解明し、今後の対策につなげていく努力が何よりも求められているのである。

しかし、トランプ政権は、米国第一主義の立場から中国と地政学、技術、貿易での対立を追求する一方、感染症対策に関する中国との協力を軽視し、疾病対策予防センターの中国オフィスを空白にしてきた。中国が近隣諸国の主権を脅かし、技術を通じて権威主義的な秩序の拡大を目指していることや、貿易において不公平な慣行を続けて行くことは批判するべきである。だが、トランプ政権は感染症対策や地球温暖化対策など、協力すべき分野での関与も縮小してきた。その結果、たとえば、米中の貿易戦争は、中国から米国への医療用品の流通を阻害することにもなった。もしトランプ政権が歴代政権の築いてきた中国との感染症対策における協力体制を維持することに注力していたならば、その後のグローバルな感染拡大の流れを大きく変えることができたかもしれない。

新型コロナウイルスのパンデミックを収束させるとともに、将来の感染症の発生に有効に対処するためには、米中の協力が不可欠である。両国が過去20年にわたって深めてきた協力関係に戻り、WHOや国連を通じたグローバルな対応が取れるように、日本を含めた国際社会は働きかけを強化する必要がある。

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