最新記事

ベンチャー

ウーバーはなぜシリコンバレー最悪の倒産になりかねないか

2017年3月13日(月)21時40分
ケビン・メイニー

その半年前には、サウジアラビアの政府系ファンド「公共投資ファンド」から35億ドルの出資を受けた。女性に運転を禁じ、同性愛者を刑務所に入れる外国政府の片棒を担ぐ印象になった。ある出資者はこの資金調達について、米フォーチュン誌にこう語った。「これで(CEOの)カラニックがどういう男かがわかる。誰にどう見られようと意に介さない」

そして今は、インターネット検索大手グーグルを傘下に持つアルファベットから、技術泥棒と名指しされている。ウーバーは昨年、米自動運転車開発ベンチャーのオットーを6億8000万ドルで買収。従業員の多くは、アルファベットの自動運転車プロジェクト部門が独立したウェイモの元従業員だ。アルファベットは元従業員の一部がウェイモから技術情報を盗んだと主張し、自動運転車開発の差し止めを求めてウーバーを提訴した。

ウーバーはかねてから、自分たちの未来は自動運転車にかかっていると言っていた。うるさい運転手たちに利益を分配して済むからだ。もしアルファベットが勝訴すれば、ウーバーはかなりの確率で、また一から自動運転技術の開発を始めるか、大金を叩いて他社の技術を買い入れる必要がありそうだ。

不満を抱く運転手と厳しい懐事情

自動運転車という漠然とした未来を当てにするウーバーも、当面は16万人の運転手を満足させねばならない。だが先日のカラビックのビデオを見る限り、運転手たちは不満を抱えているようだ。彼らはウーバーのアプリでチップがもらえるようにしてほしいが、会社側は認めない。福利厚生を求める運転手からの訴訟も起きている。

運転手の年収を実際より多く見せかける求人広告を掲載したとして連邦取引委員会(FTC)に訴えられた裁判では、2000万ドルの罰金を払わされた。ライバルの米リフトは、ウーバーの運転手に対するひどい待遇を揶揄する広告を流して運転手を囲い込もうとしている。良心的なユーザーは運転手に優しいリフトを選ぶべき、というわけだ。

戦略面では、次々に新しいことに手を出し過ぎたようだ。配食サービス「UberEats(ウーバーイーツ)」で、中東風のコロッケを頼んだ人が何人いるだろう? 自動運転車のオットーを買収した翌月には、NASA(米航空宇宙局)の科学者を雇い入れて「空飛ぶ車」を開発すると宣言した。

【参考記事】都会の空を「空飛ぶタクシー」でいっぱいにするウーバーの未来構想

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米株式ファンドの資金流出、3カ月ぶりの大きさ トラ

ワールド

金総書記、ロシア高官と会談 「主権守る取り組み支持

ビジネス

トルコ主要株価指数、週間で08年以来の大幅安 政局

ビジネス

FRB当局者、政策変更急がずと表明 トランプ関税の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャース・ロバーツ監督が大絶賛、西麻布の焼肉店はどんな店?
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 5
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 6
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    医師の常識──風邪は薬で治らない? 咳を和らげるスー…
  • 10
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 9
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 10
    ローマ人は「鉛汚染」でIQを低下させてしまった...考…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中