最新記事

南シナ海

中国を選んだフィリピンのドゥテルテ大統領――訪中決定

2016年10月14日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

フィリピンのドゥテルテ大統領 Lean Daval Jr-REUTERS

 フィリピンのドゥテルテ大統領が習近平国家主席の招聘を受け10月18日~21日、中国を公式訪問する。南シナ海問題を避けながら友好関係を目指すようだが、背後にはアメリカに対抗した中国のしたたかな戦略とチャイナ・マネーがある。

中国外交部による報道

 10月12日、中国の外交部は「習近平国家主席の招聘に応じて、フィリピン共和国のドロリゴ・ドゥテルテ大統領が、10月18日から21日まで中国を公式訪問することが決まった。中国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)以外で、ドゥテルテが最初に訪問する国となった」という通知を発表した。

 同日の外交部記者会見によれば、訪中期間中、習近平国家主席はドゥテルテ大統領と首脳会談を行い、両国関係の改善と各領域における協力および共通の関心事である国際的地域問題に関して深い意見交換を行うとのこと。李克強国務院総理および張徳江国務院副総理とも会談することになっている。

 最後に私は強調したいとして、外交部報道官はおおむね以下のように付け加えた。

「フィリピンは中国の伝統的な友好国で、国交正常化以来、両国は各領域において互いに信頼しあって発展してきた。両国の友好関係は地域の趨勢に大きな影響をもたらす。中国はフィリピンとの友好的な協力関係を非常に重視している」

 ある中国政府関係者は筆者に「アキノは頭がおかしくなったんだ」という趣旨のことを、かなり汚い罵倒の言葉を使って批判したことがある。ドゥテルテはアキノではないという言葉が、行間に透けて見える。

フィリピンの英文紙による報道

 10月10日付のフィリピンの英文紙「The Philippine Daily Inquirer」は、ドゥテルテ大統領がすでに訪中の意を表していて、「訪中の際のキーポイントは、南シナ海問題に関して、やたら騒ぎ立てないということだ」と強調したと書いている。

 それによればドゥテルテ大統領は「私には一種の良い予感があって、今後は中国とはうまくやっていけると思っている。ただし、それはスプラトリー諸島問題を持ち出さないということが前提だ。なぜなら、この問題に関しては、われわれは(中国に)勝てないからだ」と言ったとのこと。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中