最新記事

難民危機

ドイツが「国境開放」「難民歓迎」を1週間でやめた理由

Germany Imposes Controls at Austria Border

多くの難民の希望だったオーストリアからの国際列車も運行停止に

2015年9月14日(月)16時30分
ダニエル・ポリティ

「希望の国」へ ドイツにつながる線路の上をひたすら歩く難民の家族 Laszlo Balogh-REUTERS

 ドイツが緊急措置として国境を開放し難民を盛大に歓迎してからわずか1週間。再び国境を閉ざすと発表した。難民にとっては衝撃的な政策転換だ。次から次へと押し寄せる難民の数は予想をはるかに超えており、とても対処しきれなくなったという。

 今後は、この一週間の間に難民が殺到しているオーストリアとの国境近くに検問所を置く。また難民の大半がドイツへの入国手段として使ってきたオーストリアからの国際列車も運行を停止。ドイツのミュンヘンには先週土曜だけで13,000人の難民が到着し、今年の難民受け入れ数は80万人にも上るとみられている。

 トマス・デメジエール独内相がロイター通信に語ったところによれば、こうした国境管理の目的は「ドイツへの難民の流入ペースを抑え、入国した人々を秩序立った手続きで迎えるため」だという。また「難民は保護を受ける国を選ぶことはできない」ことを理解すべきだとも語った。今後オーストリアとドイツの国境を越えられるのは、EU(欧州連合)市民と、有効な書類を持つ者だけになる。

 この決定により、ドイツはEU加盟国相互の通行自由化を定めたシェンゲン協定から一時的に離脱することになる。この発表は、EUが難民問題について話し合うな内相理事会の前日に行われた。デメジエールは、新しい国境管理は「ヨーロッパへの警告」だと言う。ドイツは人道的責任を果たしているが、多くの難民受け入れとそれに伴う負担は、ヨーロッパ全体の連帯の下に負わなければならない、というのだ。

域内通行自由が生んだ難民の道

 英BBCニュースのダミアン・マクギネスは、デメジエールの発表は「抜け目のない」政治判断に基づいているという。(難民をドイツに受け入れないことで)、自ら責任を果たすようヨーロッパ諸国に圧力をかけられるからだ。だが、トラブルは避けられない。オーストリアとドイツの国境は大変な混乱に陥るだろう、と英ガーディアン紙は報じた。数万人もの難民はどんな手段を使ってでもドイツに入ろうとするだろうし、国境の手前は難民キャンプと化すだろう──。

ニュース速報

ワールド

クリントン陣営、トランプ氏のブレグジット発言を批判

ビジネス

欧州株総じて下落、スペイン株は総選挙結果受け上昇

ワールド

大気汚染による若年死、エネ政策変更なければ増加続く

ワールド

中国は長期の安定的成長が可能、英EU離脱は不透明感

MAGAZINE

特集:英国はどこへ行く?

2016-6・28号(6/21発売)

EU離脱の是非を問うイギリス国民投票はいかに──。統合の理念が揺らぐ欧州と英国を待つ未来

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    もし第3次世界大戦が起こったら

  2. 2

    英キャメロン首相「EU離脱派6つのウソ」

  3. 3

    ISISが3500人のNY「市民殺害リスト」をアプリで公開

    無差別の市民を選び出し、身近な標的を殺せと支持…

  4. 4

    ハーバードが絶賛する「日本」を私たちはまだ知らない

  5. 5

    未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

  6. 6

    Windows10の自動更新プログラム、アフリカのNGOを危険にさらす

  7. 7

    「国家崩壊」寸前、ベネズエラ国民を苦しめる社会主義の失敗

  8. 8

    搾取されるK‐POPのアイドルたち

  9. 9

    安倍首相、消費増税再延期へ、サミットで経済状況リーマン級の危機と各国に説明

    財政出動への支持取り付けと消費増税延期への地な…

  10. 10

    コンビニATM14億円不正引き出し、管理甘い日本が狙われる

    アフリカ諸国、東欧、中東などでは不正分析ソフト…

  1. 1

    レイプ写真を綿々とシェアするデジタル・ネイティブ世代の闇

    ここ最近、読んでいるだけで、腹の底から怒りと…

  2. 2

    英国のEU離脱問題、ハッピーエンドは幻か

    欧州連合(EU)にさらに権限を委譲すべきだと答え…

  3. 3

    伊勢志摩サミットの「配偶者プログラム」はとにかく最悪

    <日本でサミットなどの国際会議が開催されるたび…

  4. 4

    嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月…

  5. 5

    移民問題が「タブー」でなくなったわけ

    ここ数年、僕たちイギリスの国民は、一部の政治…

  6. 6

    間違い電話でわかった借金大国の悲しい現実

    ニューヨークに住み始めた僕は、まず携帯電話を手…

  7. 7

    中古ショップで見える「貧困」の真実

    時々僕は、自分が周りの人々とは違った経済的「…

  8. 8

    美学はどこへ行った?(1):思想・哲学・理論

    <現代アートの国際展は、思想や哲学にインスパイアさ…

  9. 9

    パックンが斬る、トランプ現象の行方【後編、パックン亡命のシナリオ】

    <【前編】はこちら> トランプ人気は否めない。…

  10. 10

    【市場】いよいよ終わりの始まりが始まった

    いよいよ終わりの始まりが始まった。それは日銀のマ…

  1. 1

    メルセデス・ベンツの長距離EV、10月に発表=ダイムラー

    ドイツの自動車大手ダイムラーは、メルセデス・…

  2. 2

    英国のEU離脱派と残留派、なお拮抗=最新の世論調査

    11日に公表された世論調査によると、英国の欧…

  3. 3

    米フロリダ州の乱射で50人死亡、容疑者は警備最大手に勤務

    米フロリダ州オーランドの、同性愛者が集まるナ…

  4. 4

    米国株式市場は続落、原油安と世界経済懸念が重し

    米国株式市場は2日続落で取引を終えた。原油が…

  5. 5

    ECBのマイナス金利、銀行に恩恵=コンスタンシオ副総裁

    欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁…

  6. 6

    英国民投票、「EU離脱」選択で何が起こるか

    欧州連合(EU)は6月23日の英国民投票を控…

  7. 7

    インタビュー:世界的な低金利、エンダウメント型投資に勝機=UBSウェルス

    UBSウェルス・マネジメントのグローバルCI…

  8. 8

    NY市場サマリー(10日)

    <為替> 原油安や銀行株主導で世界的に株安が…

  9. 9

    焦点:タカタ再建、「ラザード」効果で進展か 車各社との調整に期待

    欠陥エアバッグ部品の大量リコール(回収・無償…

  10. 10

    クリントン氏優位保つ、トランプ氏と支持率11ポイント差=調査

    ロイター/イプソスが実施した最新の世論調査に…

定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
リクルート
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

モハメド・アリ、その「第三の顔」を語ろう

STORIES ARCHIVE

  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月