なぜ実写版『リトル・マーメイド』は中国で大コケしたのか?
Disney's China Problem
中国のファンが黒い肌の人魚姫に拒否反応を示したとすれば、ディズニーは「多様性重視」路線の見直しを迫られるだろう。
昨年来、同社は「リイマジン・トゥモロー(明日を想像し直す)」のスローガンを掲げ、今後はディズニー作品に登場する主要キャラクターの50%を「公平に代表されていない集団」から選ぶとしている。
だが中国政治と大衆文化に詳しい英ノッティンガム大学のジョナサン・サリバンに言わせると、そうした「政治的公正」へのこだわりは中国社会になじまない。
「私の知る限り、問題はハリー・ベイリーの人種そのものではない。そうではなく、ただなじみのあるキャラクターが『政治的公正』の名の下で変更されたことに不満を抱いている」と、サリバンは本誌に語った。
「ファンタジー映画にも政治的な思惑を込めるのなら、そしてそれで成功したいのなら、(現地の)国民感情に合わせる必要がある。最近の中国映画を見れば分かるが、彼らが見たいのは『戦狼』みたいな自画像だ」
ちなみに2015年の『戦狼』(邦題は『ウルフ・オブ・ウォー/ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』)はアメリカ主導の傭兵部隊をやっつける中国軍特殊部隊の活躍を描いた中国映画だ。
昨年11月、ディズニー本社のCEOにロバート・アイガーが復帰した。かつて中国市場を開拓するのに成功した功労者だ。上海と香港にディズニーランドをオープンするという困難な事業を中心になって推進したのも彼で、「ディズニー史上最大規模の投資」の1つだったと自著で振り返っている。
20年にディズニーを去ったアイガーが、なぜ急に戻ってきたのか。当然、中国市場への「テコ入れ」を目指してのことと考えられている。
国産映画が大ヒット
しかし、現在のディズニーを取り巻く経営環境は厳しい。期待のストリーミングサービス「ディズニープラス」のコストは膨れ上がる一方で、収益はウォール街の予想を下回っている。
そこでアイガーは真っ先に約7000人の人員削減に踏み切った。目標は全体で55億ドルの経費節減だ。