コラム

虚言癖のある男に陰謀論者、「奇跡のやせ薬」販売人...こんな候補で共和党は大丈夫?

2022年09月20日(火)19時46分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
共和党予備選(風刺画)

©2022 ROGERS–ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<アメリカ中間選挙の予備選を勝ち抜いて共和党候補となった人物は、冷静に見れば「クレイジー」と言いたくなるような人物ばかり>

今回の風刺画の文言は絶妙だ。mad cow burgerという言葉はmad cow disease(狂牛病)にかかっているだけじゃない。madは狂っている、cowは意地悪な女性、burgerはバカな男という意味。狂牛病抜きでも成立する。crazy friesも一緒。響きはらせん状のフライドポテトcurly friesに近いけど、crazyは狂気、fryは雑魚を意味する。

では食材の産地は? farm-to-table(農家から食卓へ=産地直送)のもじりでfunny farm(精神病院)となっている。ゾウ(共和党の象徴)は狂った意地悪女やバカな男、狂気的で取るに足らないヤツを注文している感じ。絶対におなかを壊しそうなディナーだ。

中間選挙に向けて予備選挙で共和党が選んでいる候補も、本来は絶対に投票用紙に載らないはずの顔ぞろいだ。

代表格はハーシェル・ウォーカー上院議員候補。元アメフト選手のウォーカーは高校を首席で、大学を上位1%の成績で卒業し、今は年商7000万ドル以上の会社の経営者......と、本人は言うが、どれもウソ。3人の隠し子も発覚したウォーカーは「空気を吸うようにウソをつく」と関係者は話している。

空気といえば、彼は大気汚染について「アメリカの良い空気は中国に流れると決めた。そうして私たちの空気は中国の悪い空気と置き換わった」と話し、意味不明すぎると話題になった。

そんな彼を共和党員は候補に選んだ。彼だけではない。テレビで「奇跡の痩せ薬」を売っていた候補や白人至上主義のレトリックを繰り返す候補、連邦議会議事堂乱入に参加した候補など、信じ難い候補が次々と予備選挙を突破している。

そのほかにも、「ヒラリー・クリントンが子供の生き血を飲んでいる」など、荒唐無稽な主張をする陰謀説「Qアノン」と接点を持つ共和党候補が少なくとも15人も本選挙に進む。それだけではなく、大統領選に不正があったという無根拠な陰謀説を推す共和党候補が今の「普通」。全米の人口の6割をカバーする選挙区に、そうした主張をする人が出馬するという調査結果もある!

そろそろ気付こう。madでcrazyなのは、メニューに載っている人たちよりも、それを選んでいる人だゾウ。

ポイント

IF REPUBLICANS ORDERED FOOD LIKE THEY CHOOSE CANDIDATES...
もしも共和党員が候補者を選ぶようにメニューを注文すると...

I’LL TAKE THE MAD COW BURGER WITH A SIDE OF CRAZY FRIES!
狂牛バーガーにクレイジー・フライをつけてくれ!

GOP MENU
共和党メニュー

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、12月は予想下回る 雇用・所得

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story