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北朝鮮「核搭載可能なICBM実験」、米国は世界行動呼び掛け

2017年07月05日(水)13時11分

 7月5日、北朝鮮は大型核弾頭が搭載可能で新たに開発された大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を実施し、弾頭を大気圏に再突入させる技術が検証されたと発表した。朝鮮中央通信(KCNA)が報じた。写真はKCNAが4日提供した、ICBM発射実験の実施命令を下す北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2017年 ロイター)

[ソウル 5日 ロイター] - 北朝鮮は5日、大型核弾頭が搭載可能な、新たに開発された大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験を実施し、弾頭を大気圏に再突入させる技術が検証されたと発表した。

朝鮮中央通信(KCNA)によると、金正恩朝鮮労働党委員長は、実験の成功は核爆弾や水爆、ICBMを含む北朝鮮の戦略的能力の確立を示すもので、米国政府が北朝鮮に対する敵視政策をやめない限りこれら兵器の廃棄交渉に応じるつもりはないと述べた。

KCNAによると、金委員長は満面の笑みを浮かべて政府当局者や科学者、技術者に、米国は「独立記念日」に「贈り物」を受け取って気を悪くするだろうと語った。

また、今回の実験について、各段の分離や弾頭の大気圏再突入、弾頭の制御などの面で、新たに開発されたICBMの技術的な要件を確認できたとKCNAは伝えた。

米国防総省の報道官は、北朝鮮がICBMの発射実験を行ったとの結論に達したと表明した。

ティラーソン米国務長官は4日、北朝鮮によるICBM発射は同国による核の脅威の新たな高まり示すとの見方を示し、世界的な行動が必要だと主張。北朝鮮の労働者を受け入れる国や、北朝鮮政府に経済的または軍事的な支援を行う国、あるいは国連制裁の実施を怠る国はいずれも「危険な政権を支援し、ほう助している」と警告した。

その上で「全ての国が北朝鮮に対し、核兵器の追求には結果が伴うことを公式に示すべきだ」と述べた。

米国防総省も同日、北朝鮮のICBM発射実験を強く非難するとともに、北朝鮮の脅威から米国と同盟国を防衛する用意があると表明。「同盟国である韓国と日本を脅威から守るというわれわれのコミットメントを堅持する」と国省の報道官は述べた。

韓国の韓民求国防相は5日、北朝鮮が6度目の核実験を実施する可能性高いとの考えを示した。

<高まる外交圧力>

トランプ米大統領は、北朝鮮の主要な貿易相手国であり、唯一の同盟大国である中国に対し、北朝鮮が核兵器プログラムを放棄すべく圧力をかけるよう求めている。中国は現在、国連安全保障理事会の議長国を務めている。

トランプ大統領はこれまで、北朝鮮に抑制を求める中国の努力にしびれを切らしつつあると表明。トランプ政権は軍事的手段を含むあらゆる選択肢を検討中だとする一方、そうした選択肢は最終手段であり、制裁と外交圧力が望ましい方針だと示唆している。

トランプ大統領は、4日のミサイル発射を受けて、ツイッターに、「韓国と日本は我慢の限界だろう」と投稿。「中国が北朝鮮に重大な動きをし、この馬鹿げたことをきっぱりと終わらせるだろう」と指摘した。

国連安保理は、米東部時間5日午後3時(日本時間6日午前4時)に緊急会合を開催し、北朝鮮問題を協議する。米国、日本、韓国の要請を受けた。

外交関係者は、中国がこれまでの安保理決議による制裁を完全に履行していないとみており、石油禁輸のほか北朝鮮航空会社の運行や労働者の受け入れ禁止、また銀行や企業による北朝鮮との取引停止などの措置を中国が拒んでいるとみている。

7─8日にドイツのハンブルクで開く20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)でも各国がこの問題を協議する見通しだ。また、トランプ米大統領はサミット期間中に中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領と会談する。

<米本土の大部分が射程内か>

北朝鮮は4日の午前9時39分ごろ、同国西岸から1発の弾道ミサイルを発射。午後3時半、ICBMの発射実験に成功したと発表。北朝鮮の国営メディアによると、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14号」の高度は2802キロに達し、39分間、933キロの距離を飛んだとしている。

日本政府によると、ミサイルは日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。

飛行の詳細から、同ミサイルの射程距離は、米本土の大部分が射程内に入る8000キロ以上に及ぶとみられると、一部の専門家は指摘。北朝鮮の核兵器開発が大きく前進していることを示しているという。

米国に拠点を置くミサイル専門家で、同国の北朝鮮情報サイト「38ノース」に寄稿するジョン・シリング氏は、同ミサイル実験の実施は予想よりも早く、「予期していたよりも、はるかに大きな成功を収めている」との見方を示した。

同氏はまた、おそらくあと1、2年で、北朝鮮のICBMは「最小限の運用能力」を持つに至るだろうと指摘した。

<米韓は威嚇発射>

米軍によると、米軍と韓国軍は4日、北朝鮮によるICBM発射を受け、威嚇のため韓国沖にミサイルを数発発射した。威嚇には米軍のミサイル「ATACMS」と韓国軍のミサイル「玄武(ヒョンム)2」が使用された。

米韓による威嚇発射は、もし必要とあれば、北朝鮮の指導部を攻撃できる能力を示す狙いがあったと韓国軍は明らかにした。

韓国大統領府によると、威嚇発射を指示した同国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、「北朝鮮の挑発に声明で応じるには、もはや十分ではない状況にある」と語った。

今回のミサイル発射実験は、北朝鮮の核兵器プログラムを阻止するため、圧力と制裁を続ける一方で、同国を対話の場に復帰させると公約に掲げて5月に大統領に就任した文氏にとって、新たな試練となっている。

<中ロも声明>

一方、ロシアと中国は4日、中国が策定した北朝鮮のミサイル開発を巡る緊張緩和に向けた計画に参画するよう、北朝鮮、韓国、米国に対し呼び掛ける共同声明を発表。

同計画の下では、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの開発プログラムを停止する見返りに米韓は大規模合同演習を中止。これにより多国間協議の再開を目指す。

中国とロシアは共同声明で、「該当地域での状況は両国の国益に影響を及ぼす。朝鮮半島の複雑な問題を解決に導くため、ロシアと中国は緊密に連携する」とした。

ロシアと中国はまた、米国に対し韓国での新型迎撃ミサイル(THAAD)システム配備を直ちに停止するよう要請。米国は北朝鮮問題を論拠としてアジア地域での軍拡を行っており、これにより地域の戦略的な勢力均衡が乱されているとし、「ロシアと中国はTHAAD配備に反対する。関連各国に対し 配備の即時停止を呼び掛ける」とした。

*情報を追加しました。

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