ニュース速報
ビジネス

11月ロイター企業調査:26年春闘賃上げ幅、72%が25年と同水準 「下回る」は前年調査から低下  

2025年11月13日(木)10時35分

都内で2024年11月撮影。 REUTERS/Issei Kato

Tetsushi Kajimoto

[東京 13日 ロイター] - 11月のロイター企業調査で、2026年春闘について実現可能な賃上げ(ベースアップと定昇)幅を聞いたところ、25年と「同水準」との答えが72%を占めた。米国の関税政策が賃上げ機運に水を差す懸念がくすぶる中でも、25年春闘の見通しを質問した前年11月調査と比べ、「下回る」と回答した割合が13ポイント低下し、その分がほぼ「同水準」に移行した。具体的な賃上げ率は「3%以上5%未満」と「1%以上3%未満」がそれぞれ40%で最も多く、前年11月の調査結果と同じ傾向を示した。

調査は10月28日─11月7日に実施し、調査票発送企業は495社、回答社数は222社。前年11月の調査は10月23日─11月1日に実施し、調査票発送企業は505社、回答社数は240社だった。

今回調査で25年の賃上げ水準を「上回る」と回答したのは10%で、前年11月比1ポイント上昇した。「下回る」は18%で、同13ポイント低下した。

具体的にどの程度の賃上げが可能か質問したところ、「3%以上5%未満」と「1%以上3%未満」がそれぞれ40%だった。前年11月調査の42%と41%からほぼ変化がなかった。「5%以上7%未満」は9%で前年11月比横ばい、「1%未満」は同3ポイント上昇した。

回答企業からは「従業員のモチベーション維持に向けて昨年同等またはそれを超える賃上げが必要と考えている」(輸送用機器)、「新卒、経験者採用での優秀な人材確保のため、若年層の賃金を上げる方法で計画中」(紙・パルプ)、「この程度(3%から5%未満の賃上げ)は業績と関係なく他の固定費を削減してでも、賃上げは優先度が高く、実施せざるを得ない」(食品)などの声があった。

一方、「過去2年のペースでの賃上げには限界がある」(金属製品)、「次年度以降はこれまでと異なり、自動車メーカーが労務費上昇分の価格転嫁を認めそうにない」(輸送用機器)、「賃上げができる環境にない」(電機)、「仕入れ価格の上昇を価格転嫁に結び付けられず、人件費は抑制、大幅な賃上げは難しい」(サービス)といった声も聞かれた。

業績に関係なく物価上昇を上回る賃上げを今後も継続するかとの質問には、64%が「わからない」、28%が「継続する」、8%が「継続しない」と回答した。

「事業継続を実現するには人材獲得競争に勝てるようにしなければならない」(紙・パルプ)、「理系人材を中心に優秀な人材の確保の観点から、継続的な賃上げが必要となる」(化学)といった見方の一方、「物価上昇率を目標にすると際限がない懸念がある」(小売り)、「人手不足感が継続しており、賃上げをしていきたいが、その原資を確保できるか、いずれにしても収益力を継続して上げていく必要がある」(運輸・公益)などの意見が聞かれた。「賃上げコストが中小企業に与えるインパクトを軽減する措置を期待したい」(サービス)と政府の支援を求める声もあった。

<サイバー攻撃、取引先被害が11ポイント上昇>

今回の調査では、深刻な被害が増えるサイバー攻撃への対応についても聞いた。過去1年間に「自社が攻撃を受けた」と回答したのは12%で、24年7月の前回調査から3ポイント低下した。「取引先が攻撃を受けた」は20%で、前回調査から11ポイント上昇した。「ない」は61%で前回調査と同じだった。

具体的な被害は「業務停止・停滞」が47%で最多。「サーバー停止」が23%、「個人情報の漏えい」が20%、「ランサム損失」が10%で続いた。

「対策費を増額」したと回答した企業は62%、「専門部署の設置」したと回答した企業は31%だった。

(梶本哲史 グラフィックス作成:照井裕子 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

戦略的な財政出動、財政の持続可能性確保と両立させる

ビジネス

アサヒビール、10月の売上高が前年比9割超に サイ

ビジネス

イタリア、低額小包に課税計画 ファッション産業保護

ワールド

米FAA、主要空港の減便6%に 管制官不足が改善
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中