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コンビニとB'zは期待を裏切らない

2009年04月20日(月)19時41分

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今週のコラムニスト:マーティ・フリードマン

 心に平穏をもたらしてくれる東京のコンビニなしでは生きられない!

 東京にあふれるコンビニは、まるで生き物のよう。未来に向かって進化し続けるエキサイティングな存在だ。アメリカのコンビニエンスストアついては5分も話せないけれど、日本のコンビニについてなら1時間だって語れる。日本がいかに恵まれた国かを知りたければコンビニに行くのがいちばん。コンビニを見れば国の状態が分かるとさえ思っている。

 コンビニに心を奪われてしまったのは、91年、メガデスのツアーで初めて来日したとき。膨大なお菓子の数と、「牛タン×ポテトチップ」などのありえない組み合わせに、パチンコ店を思わせる明るくてカラフルな外観......海外のコンビニとの違いにまず驚いた。チェコのコンビニに行ったことはある? 悪いけれど、僕には買いたいものが何もなかった。

 アメリカのコンビニもつらい。まず、商品が変わらない。僕が子供の頃からずっと、同じブランドのポテチやスニッカーズが並んでいる。ポテチの味も、バーベキュー味ともう1種類くらいしかない。日本では毎週新しい商品が入荷されるし、期間限定とか地域限定の商品も発売される。魚だって野菜だって売っている。おにぎりは天才的な食べ物だよ。あんなに安いのに、おいしいしお腹がいっぱいになるんだから。

 24時間営業しているのもいいところ。僕の仕事は時間が不規則だから、夜中に食べ物や日用品が必要になったりする。ヨーロッパにツアーに行くときは特に不便。夜中はお店が閉まっているし品揃えも少ないから、前もって準備をしておかなければならない。東京では絶対的な安心感がある。

 商品のサイクルが早すぎて、食べたかったものが店頭から消えていることもある。でもだからこそ、「食べられるうちに手に入れたい」と思う。地方に行けば、地域限定の商品を食べる楽しみがある。僕は甘いものと辛いものが大好きなんだけど、いつも新しい味にトライするし、それがすごい楽しい。日本はなんでもトライする国だと思うし、幅広いものが受け入れられる国だと思う。

■レジ横のチョコは断れない!

 コンビニにはいろいろな秘密が隠されている。たとえば品物の置き場所には、サブリミナル効果があると思う。以前聞いたことがあるのは、なぜ温かいお茶がレジの横にあるか。熱いものを持ちながら買い物はできないから、レジの横に置いてあるんだって。そういう理論的な発想はたぶん日本だけにしかない。レジ横にはよくチョコレートとかも置いてあるけど、これじゃ断れないよ!

 スペースは小さいけれど、物理的な無駄がまったくないところもすごい。お客さんの歩き方を研究して、完璧に設計されていると思う。これはコンビニだけに限らないこと。たとえば東京の楽器店は、アメリカの店に比べて10倍くらいの商品数がある。なのに、スペースは半分くらい。置き方がとても効率的だから、いいものを探すのに歩き回らなくて済む。楽器好きにとってはパラダイス!

 もう1つ日本で特徴的なのが、お客さんの声をとても大切にしていること。どこへ行ってもアンケートを行っている。マンガはアンケートの結果しだいで連載打ち切りがあったりするし、CDにもアンケートが。ライブイベントでさえアンケートを配ってる。アーティストにとって、ライブが採点されるのは怖いんだけどね!

 だからアメリカのコンビニに入ると、「なんで日本のコンビニを勉強しないんだ」と頭にくることもある。アメリカは強く利益を追求するのに、儲けるために必要な研究――たとえばアンケート――なんかを最優先していない。その点日本は、「客はいつも正しい」という英語の表現が、コンセプトとして徹底している。もちろん利益を追求しているんだけど、「顧客を満足させたい」という意識がちゃんと伝わってくる。

 いちばん好きなセブンイレブンをバンドに例えると、B'zかな。大物で、絶対にがっかりさせない。とにかく、日本のコンビニでがっかりした記憶はほとんどない。近所には4軒のコンビニがあるけれど、もっとあってもいい。

 唯一あったらうれしいと思うのは、スラーピーというカキ氷みたいなフローズンドリンク。アメリカではセブンイレブン=スラーピーというくらい有名だ。日本のコンビニにも似たものがあるけれど、スラーピーにはかなわない。もし日本でも売り始めたら、アメリカに帰れなくなっちゃうよ!

マーティ・フリードマン

COLUMNIST PROFILE

Marty Friedman マーティ・フリードマン

米ワシントン州出身。ヘビーメタルバンド「メガデス」のギタリストとして活躍し、現在は日本を拠点に活動中。近著に『い〜じゃん!J−POP〜だから僕は日本にやって来た』(日経BP出版センター)がある。また、日本の名曲をギターで奏でた『TOKYO JUKEBOX』を5月20日に発売。

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COLUMNIST PROFILE

東京に住む外国人によるリレーコラム

・マーティ・フリードマン(ミュージシャン)
・マイケル・プロンコ(明治学院大学教授)
・李小牧(歌舞伎町案内人)
・コン・ヨンソク(一橋大学准教授)
・レジス・アルノー(仏フィガロ紙記者)