World Voice

ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々

新町智哉|ミャンマー

ミャンマーのお母さんド・アウンサンスーチーとはどんな人物なのか

皆さんおはようございます。
ミャンマーは最も暑いこの時期に長期休みに入ります。
水祭りのこの期間は町中至るところでお祭りがあったり、あるいは地方に旅行にいったりと平時であれば楽しい時期です。
クーデター直後の水祭りは軍が主導で行おうという動きに対し国民は完全にボイコットをし昨年は軍の様々なプレッシャーにより中途半端な水祭りとなったイメージでした。
果たして今年はどのような形になるのか、水祭りをめぐり軍が質の悪いやくざのような事をしているというような話も聞くのでとても浮かれてはいられないと思うヤンゴンです。

さて、昨日は建国の父「ウ・アウンサン」についてお話させていただきました。
今日は国民の母と呼ばれている「ド・アウンサン・スー・チー」についてです。
現在軍により不当に拘束されありもしないいくつもの罪で軍の影響力しかない司法によって裁かれネピドーの刑務所へ収監されてしまっているスーチーさんですが、いったいどのような人物なのかをちょうど10年前の東京大学での講演を中心に私なりの考えをお伝えしたいと思います。

無題.jpg

正直こちらの映像を全て観ていただければ今更私が説明しなくても本当に素晴らしい人物であるという事はおわかりいただけると思います。
何故か彼女を独裁者などと揶揄する声も聞こえたりしますが、それがいかにしょうもない雑音なのかはこの講演一つ観ればわかると思います。
それくらいスケールが違います。

2013年4月17日
「民主主義と世界をリードする若者たちへの期待」
というタイトルで東京大学にてスーチーさんは講演を行いました。
ちょうど10年前です。
この講演ではそれまでの過去の民主主義では無かったミャンマーを語られています。
今はようやく民主主義に向かい始めたところなのだとおっしゃっていたのですが、今日現在のミャンマーを考えると非常に複雑な想いにかられます。

いくつか印象的な言葉があります。

引用
選挙は民主主義の出発点でしかありません。
選挙は終着点ではありません。
ましてや民主主義を保証するものでもありません。

皆さんには期待する権利があります。
しかし、同時に自分の責任を受け入れなければなりません。

民主主義の本当の支援とは政府ではなく人への支援です。
日本にお願いしたいのはビルマの政府ではなくビルマの人々への支援に専念することです。

更に講演後の質疑応答でも素晴らしい受け答えをしています。
10年前のお話なのですが、現在の日本にとっても大事な事を話されていますので是非聞いてみてください。
貴重なデータを残しているのは流石東大だなと感心しています。

イギリスや日本への留学経験で民主主義の国を良く知り、その上で祖国に民主主義をもたらす為に彼女は責任を取ると決めて民主化を目指すリーダーとなりました。
そのことで誰かに何かを求める事はないと言います。
全ては自由意志により自分で選んだ事だと。
この講演をしている時点でスーチーさんは15年以上の自宅軟禁を経験している。
その人物のこの言葉は物凄い重みを感じる言葉だと感じます。
今スーチーさんはどんな事を考えているのだろうか?と考える事があります。
と、同時に同じように考えているミャンマーの人々が多くいるんだろうなと思うと改めて偉大な人物だと感じました。

そんなスーチーさんと私が最接近した時のエピソードを最後にお伝えしようかと思います。
2019年の9月の事でした。
それまで何度も製作の話題に上がっていたアウンサンザムービーのクランクインを祝うイベントがヤンゴンのノボテルホテル、ボールルームで行われました。
MAXだと500人以上が収容できる大きなホールです。
沢山のメディアや関係者が詰めかける華やかな会に私もいち出演者として参加させていただきました。
この映画については過去の記事に詳しく書いていますのでそちらをお読みください。

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/shimmachi/2021/05/post-18.php

この時は私だけでは無く他の日本人出演者たちと同じテーブルだったのですが、そこにスーチーさんが来ていただき挨拶をしていってくれたのです。
ちょうど丸テーブルの向かい側にスーチーさんが位置する形でした。
私からスーチーさんに話しかける事は勿論ありませんでしたが、たまたま私がやる予定の役の話しになり、監督さんが私を紹介してくれる形になりスーチーさんがこちらを見てくれたのを覚えています。

最接近したと言ってもまあこの程度な訳ですが、それでもミャンマーの人にとっては凄く貴重な事らしく、後日いつも行っているマッサージ店の店長がニュースで私を観たと興奮して話した位です。
スーチーさんと会えるというのはそれだけ羨ましいと思われる事なのだと身をもって感じました。

もうスーチーさんが会場入りする時からオーラーが違いました。
凄くありがちな表現になってしまいますが、ただ会場に入るだけで小さなどよめきが起こるのです。
芸能人などのスターともまた違うスーチーさんだけが持つ独特の雰囲気でした。

これは余談ではありますが、この映画の行く末も気になります。
この時の監督はクーデター後民主化のデモに出ていた為に指名手配され後に拘束され収監されたル・ミン監督です。
彼は長期間収監された後、恩赦で解放はされましたが、その後は勿論まともな表現活動はできません。

アウンサンザムービーは軍の息のかかった監督に引き継がれ製作が続行された訳ですが、果たしてまともに完成するのか?
いや、むしろ完成した場合、私たち日本人が出たシーンなどはどうなるのか?
そもそも映画産業自体が軍に利するものとしてボイコットの対象になっている状況で英雄である「ウ・アウンサン」を軍のプロバガンダに使っていると非難される状態で変な編集をかけられ出されるのはたまったもんじゃないなとは思っているところです。

もしそのような納得できない形で映画が発表された場合は何か文句を言っても良いものなのでしょうか?
恐らく「絶対やめておいた方が良い」とミャンマー人の友人には言われると思います。
私も自分の身が可愛いのでめったな事はしませんが、文句を言いたい気持ちが大いにあるということだけはここに発表しておきたいと思います。

最期は随分と話が飛んでしまいましたが、皆さん是非スーチーさんの講義を聞いていただければと思います。
このような素晴らしいリーダーが頑張っていたにもかかわらず現状このような状態になってしまっているミャンマーという国は大きな悲劇に見舞われていると言えます。
ですが、そのような悲劇でも自分たちの頑張りによって覆していけるともスーチーさんは言っています。
希望は捨てずこれからもこのミャンマーという国と歩んでいきたいと思います。

それではまた明日。

 

Profile

著者プロフィール
新町智哉

映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。

Twitter:@tomoyangon
Instagram:tomoyangon
note:https://note.com/tomoyaan

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