World Voice

ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々

新町智哉|ミャンマー

2月1日ミャンマーサイレントストライキでのヤンゴンの様子

ヤンゴン環状線:筆者撮影

皆さん今晩は。
日本ではまだまだ寒い時期が続いているようですね。
記録的な雪が降ったりだとか、「温暖化ってなんだっけ?」と思う今日頃です。
前回はFMラジオJ-WAVEに出演する際の話を色々とさせていただきました。

三度目のJAM THE PLANET出演ミャンマーヤンゴンより今夜生放送

こちらその時の番組の中で私が出演したところがアーカイブで残っていますのでよければそちらも合わせて聴いてみてください。
記事と合わせていただければ理解が深まると思います。

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そして、本番で紹介した音楽がこちらです。
アーカイブには曲紹介が残っていないのでこちらからお聴きください。
新進気鋭のミャンマー若手アーティストたちのMVです。
恐らく皆さんがイメージしているようなミャンマー音楽とは全然違うものだと思います。
少し切なくなるような恋の歌です。
ミャンマーの若いアーティストの感性に触れていただければと思います。


さて、今回はその出演したJAM THE PLANETでもお話した2月1日のヤンゴンのサイレントストライキの様子をもう少し詳しくお伝えしたいと思います。
ニュースなどにもなっていたので皆さんも少なからず見聞きはしたかもしれませんが、現地の様子をリアルにお届け出来ればと思っています。

その前にお知らせです。

ミャンマーをかるた・写真・アートでもっと知ってもらうイベントを行います。
2月23日(水・祝)午前11時から17時まで
西日暮里エキラボniriで
『カラフルなミャンマーに出会う!』
と題して行います。

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会場とオンラインとを合わせた展示イベントになります。
私も現地ヤンゴンからお話しする時間があります。
チェックしてみてください。


それでは本題です。
2月1日。
クーデターから一年が経過したこの日、
ミャンマー全土で大規模なサイレントストライキが行われました。
どのような経緯で起こったかなどは前回の記事を観ていただきたいのですが、ざっくり言うと軍がこの国を統治しようとしている事に対しての反意を示す為に国民が社会活動を出来るだけ止めるという意思表示です。

控えめな方法だと思われるかもしれません。
ですが、今ミャンマーで積極的な発信はそれこそ命懸けになります。
自分だけでなく、親、子供、親族だけにとどまらず、恋人や友人にまで危険が及ぶ状態の中、人々はそれでも反意を示すためにこのような形と取りました。


昨年の世界人権デーに合わせたサイレントデモでは私も一日中大人しく家に籠っていたのですが、今回は執拗にサイレントデモを阻止しようとする軍の動きもあることですし、少しだけ私も外に出て街の様子を感じる事にしました。

サイレントデモの時間は午前10時から午後4時まで。
先ずは午前9時頃からサイレントストライキが始まるまで街を周ってみようと思い出掛けました。

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鳥たちには人間のやっていることは関係ないんでしょうね。
水浴びをしていました。


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普段なら車もそれなりに走っている時間帯ではありますが、この日は僅かに走っている程度でした。
あと数十分で10時になるというタイミングでした。


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サイレントストライキまで30分といったところ。
ヤンゴンの渋滞で有名なスポットの一つであるこの場所もこんな感じです。
バスもこの日走っていないという事はありません(そもそももし走らなければ軍から不当なペナルティがありますから)が本数は少な目です。
ヤンゴンの一般の人の多くはバス移動しているので、数が少なかったという事はそれだけ移動も少なかったという事です。

有名なシュエダゴンパゴダへの参拝客もほとんどないようでした。
この辺りには出店が沢山あるんですが、すでに時間が始まる前から営業をしていない店もチラホラありました。


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間もなく10時になろうというところです。
ここから家に向かって帰るのですが、10時になった瞬間は時計を見なくてももわかりました。
10時になったのを境に街が一気に静かになったからでした。
ヤンゴンはいわゆる都会の喧騒が多い街です。
全ての音が無くなったという訳では勿論ないのですが、急に静かになり、遠くの鳥の声が聞こえてきて10時になったのを感じました。
この後、急いで家に帰りました。

一旦家に帰りいつも以上に静かな家での時間を過ごしました。
遠くで鳥の鳴き声と犬の鳴き声がよく聞こえていました。
何度か耳がキーンとなっていたのを覚えています。
その後今度はサイレントストライキが終了する16時の一時間前くらいから外に出て街の様子を観に行きました。


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これはもう終了間際の様子です。
少しフライングして外に出ている人もいるようでしたが、やはり人通りも車通りも僅かです。
ここはシュエダゴンパゴダロードと言っていつもは人も車も多い道です。

因みにこの写真を撮っていた直ぐ後に軍の車両とすれ違いました。
ヒヤッとしました。
写真を撮っているところを見られたら私が外国人だとわかっても良くて罰金やスマホ没収、最悪拘束される可能性もあります。
現状比較的地方より平和と言われているヤンゴンでもこういった事態になっています。
あまり油断はできません。

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よく見ると遠くに電車が走って行っている様子がわかると思います。
現在は電車運行も軍の監視下にあるので走らせない訳にはいかないのでしょう。
クーデター以前は利用者も多かったようですが、クーデター後は軍人が移動したりすることもありかなり一般の人の使用は減ったというような話を聞きます。
全てが日本から寄贈されたものなので複雑な思いです。


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記録を観たらこれが15:58に撮影したものでした。
特に外国人観光客が訪れていたマーケットがあるボージョーアウンサン通りです。
右上に見えるのは日本が建設したサクラタワーが観えます。
この後16時になったのも時計を見ずにわかりました。
何故なら16時になったらみんなで拍手をしてこのサイレントストライキを成功させた事を称え合おうというのがSNSなどで拡散されていて、それが始まったからです。

しかし、私が聞いたのは拍手というよりは手拍子のような控え目なものでした。
後でわかったのですが、私がいたダウンタウンとは別の場所では盛大に拍手していた地域もあったそうです。

ですが、この日「拍手をしたものは捕まえる」というような軍の公式なのか非公式なのかよくわからない発表もあり、実際この時ヤンゴンだけでも100人近くの人が「拍手をした罪」で拘束されたそうです。
ミャンマー全土でもかなりの人が拘束されたと独立系メディアなどで報道されました。

このダウンタウンも軍の監視は至る所にあり(密告者含む)あまり派手には出来なかったんだろうなと推測しました。
ですが、16時を過ぎた後、街に出てき出した人々の顔はとても晴れやかで拍手こそ大きくは出来なかったものの、みんな笑顔で称え合っているようにみえました。

小さな子供が元気よく拍手していて、それを周りの大人たちが微笑みながら観ていた印象的なシーンに遭遇しました。
もちろん私が密告者と勘違いされてはいけないのでその様子は心の中だけにしまっておきました。


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街に人や車が戻ってきた様子です。
ダウンタウンの喧騒が一気に帰って来たようで
やはりヤンゴンは騒がしい街だったと再認識しました。


この日はヤンゴンだけでなく全国的にこのようなサイレントストライキが行われました。
そんな中わざわざ軍支持のデモなども行われたようです。
1人5000チャット(320円程)で雇われた人たちだそうで
「5000チャットを食べる人々」と揶揄されるような事もあるそうです。
その様子は私も映像や写真などで観ましたが、少し地方からこられている人たちだなという印象です。

実際どこまでが雇われた人でどこまでが本当に軍支持の人かはわかりません。
国民の軍が起こしたクーデターに反対するデモはことごとく弾圧され場合によっては命を奪う事もするのに、この時の軍支持のデモには逆に軍と警察の警護が付いていました。
このことからもミャンマーの異常さが伝わってきます。

少なくとも昨年様々なデモを観て来た私としては数百人程度のデモでは特に感じるものは何もありませんでした。
この同じダウンタウンで昨年の同じ時期には人を埋め尽くす何万もの人達を観て感じているので、それとは比べようもありません。

まだまだミャンマーは暗い闇の中で、更に霧が濃くかかっているような状況の様に感じます。
まもなく迎える2回目の2月22日。
昨年は全国で数百万人のゼネラルストライキが合った日から一年。
ミャンマー国民の多くの人々は何を考え、何を想っているのか。
現地で寄り添い共に進んでいけるよう頑張りたいと思います。

それではまた。

 

Profile

著者プロフィール
新町智哉

映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。

Twitter:@tomoyangon
Instagram:tomoyangon
note:https://note.com/tomoyaan

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