コラム

バイデン大統領が示したIPEF(インド太平洋経済枠組み)に込められた壮大なビジョン

2022年05月23日(月)16時45分

インド太平洋地域版のEUのような政治的な枠組みを創造する狙い

中国の経済力が強大になる中、従来型の安全保障や経済連携の枠組みのみでは、インド太平洋地域から自由主義・民主主義の価値観が薄まってしまうことになるだろう。そのジリ貧の状況を逆転するためには、従来までの延長線上の枠組みと交渉を超える必要がある。

IPEFは経済枠組みと謳ってはいるものの、従来までは十分に共有されているとは言えなかった非欧米圏での価値観に基づく政治同盟の枠組みに発展していく可能性がある。IPEFの交渉の先には、インド太平洋地域版のEUのような政治的な枠組みを創造する壮大な狙いが見え隠れする。

IPEFはインド太平洋地域の未来を変える壮大なビジョンを秘めた提案である。バイデン大統領はそのIPEFの発表を日本で行ったことの意味は極めて重い。日本側が米国のパートナーとしてこの提案に対して積極的に応答を示していくのか。バイデン政権から重要な問いかけがなされたと言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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