最新記事
中東

爆撃の下で約束された「未来」――ガザで結婚を夢見た若者たちの戦争のリアル

Voices From Behind the Wall

2025年12月17日(水)17時11分
サマ・アブシャイバ
爆撃の下で約束された「未来」――ガザで結婚を夢見た若者たちの戦争のリアル

ガザの医療施設もハマスの拠点とされイスラエル軍の攻撃を受けた(24年4月) DAWOUD ABU ALKASーREUTERS

<「壁の外」にいる私たちは、戦争を遠い出来事として眺めがちだ。だが、戦場には確かに生活があり、愛があり、未来を信じて生きる若者たちがいる>

「壁の外」にいる我々は戦争のリアルを見ようとせず、「数」として捉えがちだ。しかし、戦場となっている場所には、どの死者にも名前や顔がある。

そのことを証明するため、戦場にいる自分たちの声と主張を、悲しみと不屈の希望を10年前から発信しているガザの若者たちがいる。

彼らが克明につづった、戦争のリアルな「内側」を集めたアンソロジーの邦訳『〈ガザ〉を生きる パレスチナの若者たち10年の手記』(原書房)に収録された手記から抜粋。

◇ ◇ ◇



痛みに満ちた世界において、愛は障壁を乗り越え、厳しすぎるほど厳しい状況に耐える力をくれる。この真実を私に教えてくれたのは、友人のヒンドと、その生涯の恋人であるマリクだ。魂を愛で結ばれたふたりだが、その旅路は思いもよらない道をたどった。

マリクがヒンドの存在を意識するようになったのは、ふたりがガザ市近郊のザイトゥンに住んでいたころだ。マリクはまたたく間に、ヒンドの大きな瞳と希望に満ちた笑顔のとりこになった。

出会ってからそれほど日が経たないうちに、マリクはヒンドと結婚したいという気持ちを自覚し、伝統に従ってヒンドの父に許しを求めた。婚約そのものは古いやり方にのっとっていたが、ヒンドがマリクに対して抱く愛情は本物だった。ヒンドはマリクの誠実さ、ユーモアのセンス、そして心の広さを愛した。

貧困や働き口がないことなど、様々な困難に見舞われたせいでマリクとヒンドは婚約した後も2年にわたって結婚の日取りを決めることができなかった。その間にも、ふたりの絆はますます深まった。なぜ結婚していないのと聞かれると、まだ準備ができていないから、と答えたものだ。

ヒンドは婚約してまもない日々のことをよく思い出しては、マリクのやさしさと揺るぎない支えについて話してくれた。「私たちはふたりとも、愛というのは『温かな家庭を築こう』という誓いだと思っている。子どもたちがふざけ合い、私が彼の好きな料理を作って、みんなで一緒に食べるような家庭を」

リーダーシップ
「AIに使われるか、AIを従えるか」 一橋大学が問う、エージェント時代の「次世代エグゼクティブ」の条件
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

追加協調放出含め、さらなる対応を機動的に講じる準備

ワールド

トランプ氏、ホルムズ開放なければ「カーグ島」標的と

ワールド

米提案「非現実的」とイラン、イエメンなどからイスラ

ビジネス

ECB、政策調整でためらいや先回りはせず=レーン専
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中