ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?

ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE

2025年4月11日(金)12時50分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

「アメリカのサプライチェーンは世界的な貿易戦争の影響を受ける。これが米製造業の復活につながるとは思えない」とレーンは述べ、こう続けた。「バリューチェーンの一部を国内に戻すためのインセンティブを設けながら、一方では関税の乱発により、チェーンの残りの部分に打撃を与えている」

顧みれば、あの時代に日本への「外圧」が効いたのは慎重に標的を絞っていたからだ。対してトランプは片っ端から関税を乱射するのみ。これでは世界経済が沈んでしまう。40年前の対日圧力は一国だけを標的としていたし、冷戦下でアメリカの「核の傘」に頼る日本にはアメリカに報復するという選択肢がなかった。


しかし今、トランプは欧州から韓国に至る同盟諸国に安全保障の撤回をちらつかせつつ、貿易面での圧力を高めている。名指しされた国の大半は同程度の報復関税で対抗する。そうなれば、100年前の世界大恐慌が再現される可能性が高まる。

当然のことながら、「タリフマン」トランプにひれ伏す国や企業ばかりではない。現に日本のサントリーホールディングスは、アメリカ市場への供給を減らし、同社の高級ウイスキーを国内やアジア諸国に振り向ける可能性を示唆している。

こんな関税は「野蛮で、何の根拠もない」。そう切り捨て、欧州の企業に対米投資の一時停止を呼びかけたのはフランスのエマニュエル・マクロン大統領。「アメリカ経済に巨額の投資をしている欧州の有力企業が、一方で狙い撃ちにされる。これは何のメッセージだ?」と言い、こう続けた。「みんな、しっかり連帯して対処するべきだ」

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現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

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