最新記事
移民

「先生、私たちは強制送還されるんですか?」...トランプ再選の翌日にアメリカの教室で起こったこと

Our Children Are Our Future

2024年12月3日(火)14時33分
ロナク・シャー(米インディアナ州の中等学校科学教員)
米インディアナ州の中等学校科学教員のロナク・シャー

若い世代は将来の課題に向けて準備していると感じるというシャー RONAK SHAH

<米インディアナ州の中等学校で科学を教える教員が味わった無力感と未来への希望>

「先生、移民は全員、強制送還されるんですか」

11月6日の朝、クラスのホームルームで、まず聞かれたのがそれだった。質問した生徒は7年生(日本の中学1年生に相当)で、もともとは中米ホンジュラス出身だ。


緊張感に満ちた米大統領選の翌日のことで、私は複雑な感情を整理し切れず、疲労感も覚えていた。だが生徒には、教師として正しい返答をしなければならない。事実だけを指摘しようと考え、こう答えた。「毎年、移民の一部は送還されているが、大半の人はそうではない」と。

「それなら、どうしてトランプは、私たち全員を送還すると言っているんですか」

私は困惑した。大統領選で勝利したドナルド・トランプ前大統領の、移民の法的地位にかかわらず全員を送還するという投稿を、この生徒はソーシャルメディアで数多く目にしていた。「私たちの国から彼らを追い出せ」というメッセージもあったという。

生徒の精神的成長に多大な影響を与える立場にある教師は、自身の政治的見解をむやみに表明してはならない。同時に、適切な事実と併せて、生徒に考えさせる形で返答する責任もある。

何を言えばいいのか分からなかったし、7年生の気をそらすのは簡単だ。それでも、移民法はとても複雑だと、生徒には話した。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中