最新記事
中国軍

もはや性能はアメリカ製と同等...中国が台湾の空に続々と送り込む「軍事用ドローン」、その真の狙いとは?

DRONES TARGET TAIWAN

2023年6月15日(木)17時19分
オリ・ペッカ・スオーサ(アラブ首長国連邦ラブダンアカデミー助教)、エイドリアン・アン・ユージン(シンガポール南洋理工大学ラジャラトナム国際研究大学院研究員)
中国の軍事用ドローン

昨年11月に広東省珠海市で開かれた中国最大の航空展示会「中国国際航空宇宙博覧会」では、巨大な軍事用ドローンの姿が目立った XINHUA/AFLO

<昨年9月に初めて確認されて以降、台湾周辺に出没する中国軍の無人機が急増。台湾でどんな役割を期待しているのか?>

空飛ぶ無人機をドローン(ミツバチ)と呼ぶようになったのは、回転翼の発する音がハチの羽音に似ていたからだろう。ただし、今や現代戦の主役となった軍事用ドローンは機体も大きく、音も大きい。侵攻するロシア軍に対してウクライナ側が繰り出し、戦車や対空システムの破壊に威力を発揮したトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」は全長6.5メートル、翼幅12メートルもある。

無人であるために、ドローンは戦場の最前線で最も危険な任務を果たすことができる。ウクライナ戦では、黒海に浮かぶ要衝ズミイヌイ島の奪還やロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の撃沈にも大きく貢献した。ウクライナ側はドローンに搭載したビデオカメラがリアルタイムで送ってくる映像の一部をネット上で公開し、巧みに宣伝戦で利用している。

そして今は、中国軍のドローンが台湾周辺に頻繁に飛来している。一体、何が目的なのか。

中国軍の運用するドローンが初めて台湾周辺で確認されたのは、昨年9月5日のことだ。このとき台湾国防部は、中国軍のドローン偵察機「BZK007」の飛行経路を公表した。それを見ると、ドローンを含む9機の編隊が南西部で台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入したことが分かる。

以来、中国軍はさまざまなドローンを台湾のADIZに頻繁に侵入させている。平均で月に16回。とりわけ注目を集めたのは、今年4月末と5月上旬の2度にわたって飛来したドローンの行動だ。

台湾国防部のADIZ日報によれば、まず4月27日に中高度長時間滞空(MALE)ドローン「TB001」が南から北へ、反時計回りに台湾本島を周回した。同機は中国と台湾の非公式の境界線である「中間線」を越えて台湾南西部のADIZに侵入。フィリピンとの間のバシー海峡を通過した後、台湾の東岸沿いに北上し、その後は北東部の中間線の端を経由して中国本土に戻った。

これとは別のドローン「BZK005」も南東部で台湾のADIZに侵入し、東側へ回り込んだ後、本土に戻った。なお、このときには有人の戦闘機なども台湾との中間線を越えて飛来している。

グレーゾーン作戦の一環?

次いで5月2日、日本の防衛省は与那国島と台湾の間を中国軍のドローンらしき飛行体が通過したため、航空自衛隊がF15戦闘機を緊急発進させて対応したことを明らかにした。台湾の東岸沖を抜けた当該飛行体の航跡も公表している。

この件は台湾国防部も翌日になって確認し、BZK0051機が台湾北方で中間線を越えて侵入し、時計回りで周回した後、バシー海峡を越えて飛び去ったと報告している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

原油先物7%超安、イランが米軍基地攻撃も原油輸送は

ワールド

米国務長官、中国にイランへの働きかけ要請 ホルムズ

ビジネス

米国株式市場=上昇、FRB当局者の利下げ発言を好感

ワールド

米下院議長、対イラン軍事制限法案の採決拒否 米軍基
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中