最新記事
ギャンブル

「時限爆弾」だと専門家は警告...アメリカ社会を蝕み始めたスポーツ賭博、その標的とは

RISKY BUSINESS

2023年5月11日(木)16時30分
メーガン・ガン(本誌記者)
スポーツ賭博

ANDRESR/GETTY IMAGES

<ここ数年で多くの州がスポーツ賭博を解禁し、カジノ業者の収益と州政府の税収が増えているが、ギャンブル依存症への懸念も高まっている>

毎年春に開催される米大学男子バスケットボールの「NCAA(全米大学体育協会)ディビジョン1・トーナメント」は、大学スポーツの頂点ともいうべき花形イベントだ。しかし、それだけでなく、この大会は大勢の人が莫大な金を賭ける機会にもなり始めている。

もはや職場の同僚とささやかな金を賭けるだけではない。米カジノ産業の業界団体「アメリカ・ゲーミング協会(AGA)」によると、「アメリカで最も大金が賭けられている競技会」になっている。

AGAによれば、今年の大会では推計6800万人のアメリカ人が賭けた総額は155億ドルに上る見込みだという。昨年の4500万人、31億ドルと比べて大幅に増加することになる。驚異的な成長の原動力になっているのは、オンラインでの合法のスポーツ賭博の人気が高まっていることだと、AGAは指摘している。

2018年の連邦最高裁判決によって道が開かれて以来、合法のスポーツ賭博市場は急拡大している。アプリで手軽にオンライン賭博にアクセスできることと、莫大な資金を投じた広告キャンペーンが行われていることがその後押しになってきた。

これまでにスポーツ賭博を合法化した州は36州。さらに8つの州が合法化を検討中だ。現在、スポーツ賭博が合法とされている土地で暮らしている人は、アメリカの成人の半分以上に上る。

こうした状況を背景に、カジノ企業は空前の売り上げを記録し、州政府の税収も増加している。そして、ギャンブル依存症など賭博にまつわる深刻な問題も急増するだろうと、多くの専門家が危惧している。

問題が広がっている証拠に、ギャンブル関連の相談サービスに寄せられる相談件数が増えている。21年のデータ(入手できる最新のデータ)によると、業界の支援を受けている「全米プロブレム・ギャンブリング評議会(NCPG)」が運営する相談サービスへの相談件数は、前年比で電話相談が43%、テキストメッセージによる相談が59%、チャットによる相談が84%増加したという。

スポーツに賭けることの罠

これでも十分に憂慮すべきデータだが、本誌の調べでは、相談件数はもっと急激なペースで増えている。

例えばバージニア州では、スポーツ賭博が合法化されて最初の1年間で電話相談件数が387%増加した。マサチューセッツ州では、20年以降に相談件数が276%増えている。オハイオ州はこの1月にスポーツ賭博が合法化されたばかりだが、最初の1カ月間に州の相談サービスに寄せられた電話相談件数は、前年同期の3倍に跳ね上がった。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ジャーナリストの投獄、世界で330人と依然高水準 

ワールド

デンマーク外相、トランプ氏の武力不行使発言を評価 

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、25年12月は9.3%低下 

ワールド

FRB議長候補は「就任すると変わる」、トランプ氏が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 10
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 9
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中