最新記事
米銃乱射事件

米銃乱射の容疑者はトランスジェンダー、なのにドラァグクィーンが同情を集める訳

Tennessee Republicans' Ban on Drag Shows Mocked After Mass Shooting

2023年3月28日(火)16時30分
アンナ・スキナー

未成年の前での興行を禁止される前にドラァグショーを楽しむ客たち(3月26日、テネシー州メンフィス) Karen Pulfer Focht-REUTERS

<悲劇が繰り返されたテネシー州で、子どもにとって本当に危険なのは性的マイノリティーか銃かという因縁の論争に火が付いた>

3月27日にテネシー州ナッシュビルの私立学校で起きた銃乱射事件で、3人の子ども(全員9歳)と3人の職員が死亡した。これを受けて、同州の共和党議員たちが非難を浴びている。

【ボディカメラ映像】校舎に潜む容疑者を射殺するまで

事件後、容疑者がトランスジェンダーだった、という報道と警察発表があると、多くのツイッターユーザーがテネシー州の共和党議員を激しく非難し、ドラァグクイーン(派手なメイクと「女装」でショーをするゲイ)たちに共感を寄せた。

トランスジェンダーが銃乱射事件を起こした後にいったいなぜか。テネシー州上院は3月、共和党の基本方針に従って、公共の場や子どもの近くでドラァグショーを行うことを禁止する法案を可決した。性的マイノリティーに対する制限はそれだけではない。4月1日からは、学校や公園、礼拝所の周辺でドラァグショーを行うことができなくなる。また、トランスジェンダーの未成年がテネシー州でホルモン剤の処方や手術など、性同一性障害の治療を受けることを禁止する法案も可決された。

一方、テネシー州では依然として、殺傷力の高いアサルト・ウェポンは合法だ。

銃乱射の現場となったのは、ナッシュビルにあるキリスト教系の私立学校「コベナント・スクール」。容疑者は、現場で警官に射殺されたが、警察の発表によると、少なくとも2丁のアサルト・ライフルと1丁の拳銃で武装していたとされている。この悲劇の一報が伝えられた後、ジョー・バイデン米大統領は、全米規模でアサルト・ウェポンを禁止するよう連邦議会に要請した。アサルト・ウェポンはいくつかの州ですでに禁止されているが、テネシー州では禁止されていない。

MSNBCのエグゼクティブ・プロデューサー、カイル・グリフィンは27日午後、「2023年のテネシー州共和党:ドラァグショーを禁止」とツイート。その一方で「州内における銃へのアクセスは大幅に拡大する動き。銃の所持が可能な年齢を、21歳から18歳に引き下げる法案を含む」

「(また銃乱射事件)。だがテネシー州で禁止されるのは(銃ではなく)、ドラァグショーや性同一性障害の治療だ」。活動家でテレビ司会者のパドマ・ラクシュミは、そうツイートしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物、25年は約20%下落 供給過剰巡る懸念で

ワールド

中国、牛肉輸入にセーフガード設定 国内産業保護狙い

ワールド

米欧ウクライナ、戦争終結に向けた対応協議 ゼレンス

ワールド

プーチン氏、ウクライナでの「勝利信じる」 新年演説
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中