最新記事
米ロ衝突事故

一触即発の黒海で、米軍無人機に突っ込んでくるロシアの素人操縦士

NATO May Ramp Up Black Sea Presence After U.S. Drone Downed: Ex-General

2023年3月15日(水)16時34分
マシュー・インペリ

墜落したアメリカ空軍のドローン「MQ-9リーパー」(写真はグアムの基地) SENIOR AIRMAN CHRISTA ANDERSON/U.S. NATIONAL GUARD

<ロシア空軍の妨害は、米軍にとって以前からこの地域の懸念事項だった。パイロットの腕前が危険なほど酷すぎるからだ>

3月14日、米軍のドローンが黒海上空でロシア軍戦闘機と衝突して落下した。北大西洋条約機構(NATO)はこの事件を受け、黒海でのプレゼンスを増強する可能性があるとの見方を元アメリカ陸軍大将のマーク・ハートリングが示した。

「これはおそらくロシア軍パイロットの大きなミスだろう。アメリカから、この一件を非難する声明と方針が発されるだろう。今後は、いかなるドローンでも単機で飛行することはなくなるはずだ。数時間以内に、米軍の航空機やNATOの航空機が、黒海でのプレゼンスを強化する可能性もある」。CNNに出演した際に、ハートリングはそう述べた。

ハートリングの発言の少し前、アメリカ欧州軍(USEUCOM)は、アメリカ空軍のドローン「MQ-9リーパー」が、ロシアの戦闘機「Su-27」と衝突して落下したと発表した。

「午前7時3分、ロシアのSu-27戦闘機の1機がMQ-7のプロペラに衝突し、米軍はこのMQ-9を公海に落下させる措置を取らざるを得なくなった。この衝突の前にも複数回、複数機のSu-27が(MQ-7に)燃料を浴びせ、MQ-9の前を無謀かつ環境への配慮に欠けるプロ意識に欠ける態度で飛行した。この一件は、安全への配慮とプロ意識に欠けているだけでなく、パイロットの能力の欠如を示すものだ」と、USEUCOMは声明で述べた。

アメリカ空軍大将で、アメリカ欧州・アフリカ空軍司令官のジェームズ・B・ヘッカーは、アメリカ空軍このドローンは「公海上で通常の任務を行っていた」とし、結果的にこのドローンを「完全に喪失」することになったと述べた。「ロシア機による、安全性とプロ意識に欠ける行動により、両方の航空機がもう少しで墜落するところだった」

ロシアとウクライナ侵攻以降、ロシアとアメリカの関係は悪化の一途をたどっている。

ハートリングは、本誌の取材に対してツイッターのダイレクトメッセージで回答し、自身がアメリカ欧州・アフリカ陸軍の司令官を務めていた2011〜2012年当時、アメリカ欧州・アフリカ空軍(USAFE)の将校たちとの間で頻繁に行ったミーティングで聞いた話を明かした。

「ある日、この戦域における懸念事項のリストや、自分たちの見解について議論していた時、USAFEの将官の1人が、『リストアップされていない懸念事項』の1つとして、ロシア軍による妨害があると、私に教えてくれた。ロシア側のパイロットの訓練がひど過ぎるのがその理由だ。『あまり腕のいいパイロットとは言えないので、いつか事故が起きるだろう』とのことだった。NATOの空域警備活動の一環として、航空機が継続的に警戒態勢にあるのにはれっきとした理由がある」

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

現代自、米国生産を拡大へ 関税影響で利益率目標引き

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中