最新記事

経済戦略

米中の間で「いいとこ取り」してきた韓国が、半導体供給でついに決断を求められる

No Longer a Middle Way?

2022年1月25日(火)17時35分
ジン・カイ(広東省社会科学院准教授)
韓国サムスン半導体

世界を牽引する韓国の半導体産業がアメリカのサプライチェーン再編成を支える SEONGJOON CHOーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<半導体の40%を中国に輸出する韓国に、「サプライチェーン」の強化と再構築を目指すアメリカが方針転換を強く迫っている>

昨年12月、ホセ・フェルナンデス米国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)が第6回米韓高官級経済協議(SED)のため首都ソウルを訪問。韓国に対し、半導体分野の「レジリエンス(回復力)のある」サプライチェーン構築に向けて、より大きな役割を果たすことを要求した。

アメリカは、特にハイテク産業で中国との戦略的競争が厳しさを増すなか、世界的なサプライチェーンの混乱や半導体不足に対処しようとしている。11月にはキャサリン・タイ米通商代表もソウル、東京、ニューデリーを訪れた。

バイデン米政権は野心的なサプライチェーンの再構築を掲げ、昨年6月の報告書で特に脆弱な4分野を指摘した。そのうち半導体、高容量バッテリー、医薬品の3分野全てでアメリカに協力できる国は、韓国だけだ。残るレアアース(希土類)を含む重要鉱物の分野は中国が主導権を握っている。

SEDで取り上げられる議題の傾向は、アメリカのグローバル政策における同盟国・韓国の重要性と、米中の競争を反映している。

2015年11月に始まった第1回SEDでは、健康安全保障、北極、海洋など「ニューフロンティア」に焦点が当てられた。中国問題が浮上したのは17年の第2回で、韓国は米中貿易摩擦の激化で自分たちに悪影響が及ばないように、アメリカに協力を求めた。

18年10月の第3回ではアメリカが韓国に対し、インド太平洋戦略でより積極的な役割を果たすことを求めた。19年11月に開催された第4回でもその問題が再確認された。

20年10月の第5回では、新型コロナウイルスのパンデミックとの戦いや経済回復といったグローバルな問題解決に韓国が参加することが主な議題となった。そして今回、アメリカは半導体サプライチェーンの再構築について韓国に協力を要請した。

デカップリングに突き進む米中を前に

こうした流れは、少なくとも米韓の重要な経済問題に関して、アメリカの政策の意図や狙いがますます明確かつ詳細になっていることを示唆している。

韓国は長年にわたり、自分たちの地政学的環境を大国間、特に米中の間の「小さな隙間」と表現してきた。しかし、ジョー・バイデン米大統領が宣言した米中の「戦略的競争」が新たな局面を迎え、技術的・財政的なデカップリング(分離)に突き進む今、韓国の戦略的選択に転機が訪れようとしているのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ディズニー、第4四半期売上高は予想に届かず 26

ワールド

ウクライナ、いずれロシアとの交渉必要 「立場は日々

ビジネス

米経済「まちまち」、インフレ高すぎ 雇用に圧力=ミ

ワールド

EU通商担当、デミニミスの前倒し撤廃を提案 中国格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中