最新記事

中国

中国にテニスコート1200面分の大規模コロナ隔離センター登場

2021年10月4日(月)18時05分
青葉やまと

5000床、4000人の工員を動員して3ヶ月の短工期で完成した Guangzhou International Health Station -Youtube

<中国入国者の大部分が経由する広州に、5000床規模の大規模な隔離センターが登場>

中国南部・広州市の郊外に、大規模な検疫施設が誕生した。これまで中国への入国者は市街地のホテルでの隔離が義務付けられていたが、今後は新たに建設された大規模隔離ステーションでの集中管理に順次移行する。

ステーションは25万平方メートルで、シグルスのテニスコート約1278面分に相当する。3階建ての収容施設が数十棟つづき、ひとつの村落あるいは大規模な団地のような規模となっている。

隔離室は全5074室となる予定で、その一部がすでに完成し稼働している。9月中旬から第1陣の医療スタッフとして200名近くが勤務に当たっている。建設には日本円にしておよそ289億円が投じられ、4000人の工員を動員して3ヶ月の短工期で完成した。


先端設備で非接触を追求

急ごしらえの施設ながら、センターの各個室には生活に必要な設備が整う。室内はミントグリーンを基調として壁に木目調の床となり、ベッド、エアコン、デスク、コーヒーテーブルなど生活設備が揃う。

隔離対象者は必ずしも感染者というわけではないが、それでも医療スタッフとの接触機会を最小限に抑えるよう、細心の注意が払われている。自動化可能な工程をなるべく機械に頼り、収容者とスタッフとの接触を断つ方針だ。

チェックイン、体温測定、疫学検査、チェックアウトの各工程は、コンピュータと連動した機器によって一部自動化され、極力非接触で実施される。空港で配布されたQRコードを提示することで無人でチェックインできるしくみだ。

また、各個室にはモニターが設置され、滞在中の検温と情報のアップロードを定期的に行うほか、同端末はメッセージの受信やエンタメ端末などとしての機能も担う。施設にはロボットとドローンが配備されており、1日3食の食事の配膳や生活必需品の送付、そして部屋の消毒などを非接触で行う。施設内での感染を防ぐため、各部屋は独立した空調と下水システムを備える。

米外交問題評議会の国際保健問題担当シニア・フェローであるヤンゾン・ホアン氏は米CNNに対し、「いわば、おそらく世界でも最先端の隔離センターでしょう。非常にハイテクで、洗練されています」と語った。ホアン氏は中国の政治家たちがパンデミックの収束に時間がかかることを認識しており、その場凌ぎの策ではなく長期的な国境管理政策の一環としてこのようなセンターを建設したと解説している。

市街地から郊外へ

中国政府はゼロコロナ政策のもと、かねてから海外からの訪中者および帰国者に対して厳格な隔離を実施してきた。広州ではこれまで入国者を市中心部のホテルに隔離していたが、5月に初めてデルタ株の感染が確認されたことなどを受け、人口密集地のホテルを隔離先とする運用に対し問題意識が高まっていた。また、現行では市内300のホテルなどに宿泊先が分散しており、施設外の市民との接触リスクが高い。

新たなステーションは、これらの課題を解決すべく建設された。今後、空港に到着した入国者たちはバスでこの隔離ステーションへ送られ、2週間以上の隔離期間を現地で過ごすことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中