最新記事

台湾有事

台湾防空圏に侵入繰り返す中国軍機、単なる脅しから日本も巻き込まれかねない実戦モードか

Chinese Fighter Pilot Says Taiwan 'All Ours' After Being Asked to Leave Airspace

2021年3月31日(水)19時24分
ジョン・フェン
中国軍の早期警戒管制機KJ-500 台湾空軍が撮影

台湾空軍が撮影した中国軍の早期警戒管制機KJ-500 TAIWAN MINISTRY OF NATIONAL DEFENSE

<台湾はすべて中国のものだ──3月29日に台湾の領空を侵犯した中国空機のパイロットは、台湾からの警告にこう返答した>

台湾とその周辺の空域は「すべて中国のものだ」──3月29日に台湾の領空に侵入した中国空軍の戦闘機パイロットは台湾からの警告にこう言った、と地元メディアが報じた。中国空軍は、この3月、頻繁に台湾の領空に侵入している。

この言葉は、台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に進入した中国軍機と、それを迎え撃つ台湾空軍機のパイロットの間で現地時間10時4分に交わされたやりとりの一部。録音された会話の内容を台湾のメディアが掲載し、本誌も録音を入手した。

台湾空軍の迎撃機は、中国機に標準的な警告を無線で送った。「こちらは中華民国空軍。現在、台湾南西部の空域を高度6000メートルで飛行している中国の軍用機は、われわれの空域に入り、航空の安全を脅かしている。方向転換し、ただちに離れなさい」

数秒後、中国語で短い返答があった。「ここはすべてわれわれのものだ」

30日にこの会話を掲載した台湾の自由時報と蘋果日報によると、この短いやりとりは、フェイスブックの「台湾南西空域」というページの管理者に傍受され、録音された。

このページは、台湾周辺の軍事および民間航空機の動きを追跡し、特に中国とアメリカの軍事作戦についての情報を発信するオブザーバーによって運営されている。

アメリカとの接近に反発

匿名を条件に取材に応じたページの管理者は本誌に、29日の台湾と中国のパイロットとの間のやり取りは、航空緊急周波数121.5MHzのソフトウエア無線で傍受したと語った。

台湾軍は243.0 Mhzも使用しているが、中国の航空機を台湾のADIZから追い出そうとする試みはすべて121.5 Mhzで行われた、と管理者は付け加えた。

台湾国防部が発表したデータによると、国際法上規制されていない台湾のADIZにおいて、3月30日にも中国空軍の偵察機1機が侵入しており、3月中の中国空軍機による防衛空域への侵入は18日目になる。

だがフェイスブックの「台湾の南西空域」によれば、台湾政府が無線で警告を発した回数に基づくと、3月中に中国空軍機が台湾のADIZ南西部に侵入した回数は日数で23日、件数で61回、今年に入ってから通算208回に及ぶという。

管理者によれば、このくい違いは、台湾の国防部が中国の無人機を追跡した回数をあえて公表していないからだ。

中国空軍は、26日に台湾周辺に20機もの軍用機を送りこみ、29日にはADIZに10機を侵入させた。中国のこうした激しい動きは、台湾が3月26日にアメリカとの海洋警察分野の協力了解覚書に署名し、3月29日に米外交官が台北を訪問するなど、アメリカとの非公式な外交関係の強化に対する反発とみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干

ワールド

アングル:欧州最大のギャンブル市場イタリア、税収増

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中