最新記事

強制労働

ウイグル批判に華春瑩がアメリカの「奴隷」を持ち出し反撃

China Compares Xinjiang Cotton Harvesting to Black Workers in Deep South

2021年3月26日(金)15時59分
ジョン・フェン
米南部の綿花プランテーション(1908年)

華春瑩がツイッターに投稿したアメリカの「強制労働」の写真  Library of Congress

<ウイグル人の労働環境はアメリカの奴隷よりましと、歴史問題とのすりかえが始まった?>

先の米中外務・防衛相会談で新疆ウイグル自治区での人権抑圧を公然と批判された中国は、アメリカの人権問題を持ち出しての反論を強めている。

3月25日には、新疆ウイグル自治区で綿花の収穫作業を行うウイグル人らしい写真と、アメリカの奴隷制を示唆する深南部のプランテーション(大規模農園)の写真を比較し、アメリカの偽善を非難した。

中国外務省の報道局長である華春瑩は、ツイッターに20世紀初頭に撮影された米ミシシッピ州の綿花生産者の白黒写真を投稿。その隣に、新疆ウイグル自治区で綿花の収穫作業をするウイグル人とみられる労働者3人のカラー写真(宣伝用の写真にも見える)を並べ、「1908年のミシシッピ vs. 2015年の新疆ウイグル自治区」というタイトルを添えた。さらに、白黒写真の中央付近に写っている白人が銃を持っていることに言及して、「ショットガンと数匹の猟犬vs. 笑顔と収穫。強制労働はどっち?」と書き足した。

今週に入って、ウイグル族をはじめ、中国北西部に暮らす主にチュルク系の少数民族の扱いが米中間の大きな火種となっている。

人権擁護団体や国連の専門家らは、中国政府は少なくとも100万人のウイグル人を収容所に拘束し、ウイグル人の女性に不妊手術を強制したり、同地域にある広大な綿花農園などで強制労働をさせたりしていると非難している。新疆産の綿は、中国全体の生産量の80%以上を占める。

欧米が足並みを揃えて制裁を発表

ジョー・バイデン米政権は22日、新疆ウイグル自治区での人権侵害について責任があるとする中国の複数の当局者に対する制裁措置を発表。同じ日に欧州連合(EU)、カナダとイギリスも同様の措置を発表した。

中国政府はこれまで繰り返し、同自治区でのウイグル人拘束や強制労働の疑惑を否定。過激主義を撲滅するための「再教育施設」を提供し、貧困を和らげるために労働の機会を提供しているのだと主張してきた。

22日に欧米諸国が中国に対する制裁措置を発表すると、中国は直ちに反撃。欧州議会の議員を含む10人と、4つの組織(EU議会関連組織2つとシンクタンク2団体)に制裁を科すと発表した。

華春瑩の今回のツイートは、新疆ウイグル自治区での人権問題について国際社会の批判が高まるなか、自分たちの主張を前面に押し出そうという中国政府の試みの一環だろう。

中国は、銃による暴力や構造的な人種差別など、アメリカ国内にもある人権問題への批判を強めてきた。また強制労働によってつくられた綿を使わないと表明しているナイキやH&Mなどの欧米ファッションブランドを批判したため、国民の間で不買運動が燃え上がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBは利下げ余地ある、中立金利から0.5─1.0

ビジネス

訂正-再送-米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否

ビジネス

企業は来年の物価上昇予測、関税なお最大の懸念=米地

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中