最新記事

日米同盟

米バイデン政権初の外国訪問で国務・国防両長官が携えてきた対日不満

Blinken and Austin in Japan to Bolster Asian Allies

2021年3月16日(火)14時23分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者・米国防総省担当)
来日したブリンケン米国務長官

日米外務・防衛閣僚会合のために来日したブリンケン国務長官(東京、3月16日) Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<中国に対抗する上で日本の防衛力強化が遅れていることを米側は懸念。たとえば米軍基地の強化は韓国のほうが日本より進んでいるという>

3月15日、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が、バイデン政権発足後初めての外国訪問として日本に到着した。2人は日本の茂木敏充外務大臣・岸信夫防衛大臣と外務・防衛閣僚会合を行う。背景には、影響力を拡大しつつある中国への対応と、ドナルド・トランプ前政権の4年間で揺らいだ同盟諸国との結束強化という2つの課題を早い段階で解決しておきたいという、ジョー・バイデン米政権の狙いがある。

ブリンケンとオースティンは、14日付のワシントン・ポスト紙に連名で寄稿。中国による新彊ウイグル自治区やチベットでの人権侵害や、台湾と香港での自由の抑圧に言及し、「中国の攻勢や脅威に立ち向かうにあたって、力を合わせることで我々は強くなる」と述べた上で、こう続けた。「我々が断固たる行動を取ってリードしなければ、中国に取って代わられるだろう」

日米両国の外務・防衛閣僚会合(いわゆる「2プラス2」)に向けた訪日に先立ち、バイデン政権は米軍駐留費の負担割合について日本とは1年の延長、韓国とは5年の延長で合意している。訪日に同行している米国防総省の複数の幹部は、日米ともに戦略の見直しを行っている最中のため、米代表団としては日本側との会合で、日本側の考えに慎重に耳を傾けるつもりだと示唆した。

米軍だけで中国を抑えられるのは無理?

だが水面下では、政治的に慎重な日本政府にミサイル防衛を強化させつつ、米軍のプレゼンスを強化して、進化する中国のミサイルに対抗しなければならないという懸念の声が高まっている。

1月まで米国防総省の東アジア担当責任者だったハイノ・クリンクは、「東アジアへの米部隊の集中的な配備で、増大しつつある中国の脅威に十分に対応できるかどうかは分からない」と指摘し、こう続けた。「これは喫緊の課題であり、日米間でもっとしっかりとした議論を行うべきだ」

アメリカと60年以上にわたって同盟関係にある日本には現在、本州、九州と沖縄を中心に計5万4000人の米兵が駐留している。中国が西太平洋で挑発行為に出た場合、おそらく彼らが主力となって対応することになるが、中国による一度の攻撃で大勢の米兵が犠牲になる可能性が懸念されている。

憲法の抜本的な改正を目指していた安倍晋三前総理の下、日本では国防費の増額とこれまで以上に積極的な防衛政策の実現に向けた気運が高まっていたように見えた。しかし新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で経済が不安定になり、さらに2020年9月に安倍が健康上の理由で総理大臣を辞任したことで、その勢いには陰りが出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、カリフォルニア州で販売停止命令 執行は9

ワールド

カナダ、北極圏2カ所に領事館開設へ プレゼンス強化

ワールド

香港トップが習主席と会談、民主派メディア創業者の判

ワールド

今年のシンガポール成長予想、4.1%に上方修正=中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中