最新記事

中東

イラン、バイデンに経済制裁解除要求 コロナ禍で状況切迫

2021年1月27日(水)09時06分

イラン政府は26日、米国の対イラン制裁が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)対策を妨害していると述べ、バイデン米大統領に対イラン制裁を解除するように求めた。テヘランで昨年12月撮影(2021年 ロイター/WANA NEWS AGENCY)

イラン政府は26日、米国の対イラン制裁が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)対策を妨害していると述べ、バイデン米大統領に対イラン制裁を解除するように求めた。

イランはまた、ロシアが開発した新型コロナワクチン「スプートニクV」を国内使用のために承認したと明らかにした。製薬アストラゼネカやその他の企業からもワクチンを調達する考えを示した。

トランプ米前大統領が復活させた対イラン制裁は、正式には食品と医薬品、その他の人道的救援物資を対象外としているが、イラン国外の銀行の多くがイランとの取り引きを阻止されている。

イラン政府のアリ・ラビエ報道官は国営テレビで「バイデン米政権は前政権のような反科学主義ではないと主張している。新型コロナと闘い、国民の健康と食料を確保するために、イランの外貨資源取引や銀行への速やかな制裁解除を認めるよう期待する」と話した。制裁を解除しなければ、国際原子力機関(IAEA)が短期的な通知で実施する検証活動を妨害すると警告した。

トランプ前大統領は18年、イランの核関連活動を大きく制限する見返りに関連の制裁を解除する多国間の取り決めである15年のイラン核合意から離脱し、制裁を復活させた。

一方、モスクワ訪問中のイランのザリフ外相は26日、イランがスプートニクVを輸入・生産する予定だと話した。

イランの保健次官は国営テレビで、ワクチン購入先として検討している国外企業の一つに「スウェーデンのアストラゼネカ」を挙げた。アストラゼネカの英国とのつながりには触れなかった。イランの最高指導者ハメネイ師は米英製ワクチンの調達を禁じている。米英製のワクチンは信用できず、他国にコロナウイルスを広めるために利用されている可能性があると主張している。

ロウハニ大統領は23日、向こう数週間でワクチン接種を始めると話した。

イランは先月末、国内で開発している3種類のコロナワクチン候補の一つについて臨床試験を開始。米制裁によってワクチン輸入に支障が出ているものの、新型コロナとの闘いに勝つことができる可能性があるとしている。

イランはまた、新型コロナワクチンの公平な供給を目的とした国際的な枠組み「COVAX」に参加している。

政府のデータによるとイランの新型コロナ感染数は約139万人。死者数は5万7560人。ただ、ここ数週間は新規感染と死者数の伸びが鈍化している。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中