最新記事

日本社会

単身高齢者が賃貸物件を借りやすくする対策が不可欠な理由

2020年11月25日(水)14時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

都心では単身高齢者の過半数が借家住まいの地域もある SetsukoN/iStock.

<アパートなどの借家に住む単身高齢者の割合は全国で3割を超え、都市部の東京23区では約半数にもなる>

人口の高齢化が進んでいるが、年金等の社会保障だけではなく、住まいの問題も懸念される。世帯の3割は借家住まいで、高齢になると賃貸を借りにくくなる。独り身の場合は特にそうだ。

孤独死ともなれば家主はたまらない。特殊清掃の費用がかさみ、次の入居者に貸し出す際は家賃を大幅に下げなければならない。家賃滞納に業を煮やして明け渡しの裁判に勝っても、歩くのもままならない老人を追い出すわけにもいかない。外に放り出したら生命の危険があると判断される場合、明け渡しの強制執行はできないことになっている。

老人には貸したくないという家主の思いは、太田垣章子氏の『老後に住める家がない、明日は我が身の漂流老人』(ポプラ社)という本を読むと痛いくらい分かる。だが高齢化・未婚化が進んでいるので、不動産屋を単身の老人が訪れることは少なくない。借り手がつかないと商売にならないので、招かれざる客であっても譲歩せざるを得ないのが現実だ。

借家住まいの独居老人がどれほどいるかは、総務省『住宅土地統計』から分かる。最新の2018年データだと、世帯主が65歳以上の世帯は1894万世帯だが、単独世帯か否か、持家か借家か、という観点で4つに区分し、比重を面積図で表すと<図1>のようになる。

data201125-chart01.jpg

単身世帯が3分の1を占め(横軸)、そのうちのまた3分の1が借家世帯だ。借家の単身高齢者世帯は214万世帯で、高齢者世帯全体の11.3%となる。2018年10月時点の統計だが、高齢化・未婚化の進行により、この割合は増えることはあってもその逆はない。

サービス付きの高齢者住宅(サ高住)に住んでいる人はどうなのか、という疑問もあるが、ここで分析しているのは主世帯(1住宅に1世帯の世帯)なので、サ高住の世帯は含まれないと考えられる。アパートなどに住んでいる単身高齢者が大多数と思われる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中