最新記事

宗教

ローマ教皇フランシスコ「新型コロナは自由市場と通貨浸透説の失敗を再度証明」

2020年10月5日(月)10時48分

ローマ教皇フランシスコ(写真)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は市場の力だけに頼ったり、富裕層や大企業の優遇を通じて貧困層まで富を浸透させようという「トリクルダウン」を期待するだけの政策では社会的恩恵が生み出せないことをあらためて示したと指摘した。バチカンで撮影(2020年 ロイター/Remo Casilli)

ローマ教皇フランシスコは4日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は市場の力だけに頼ったり、富裕層や大企業の優遇を通じて貧困層まで富を浸透させようという「トリクルダウン」を期待するだけの政策では社会的恩恵が生み出せないことをあらためて示したと指摘した。

教皇は、アシジの聖フランシスコの記念日であるこの日、兄弟愛と社会的友愛をテーマにした公文書(回勅)を発表。

その中で、税制優遇などにより大企業と富裕層を支援すれば投資や雇用創出を通じて社会全体に恩恵が浸透するとの保守派の主張について、「(コロナ禍発生後も)市場の自由がすべての保障をもたらすとわれわれに思い込ませようとした人々がいた。ネオリベラル信仰というこの教義は、通貨浸透説という魔法の理論を社会問題の唯一の解決手段としてそこに逃避するもの」と糾弾した。

さらに、良い経済政策は「雇用創出を可能にするものであって、雇用を削減させるものではない」との見解を示した。

また、2007─08年の金融危機は変革の機会だったが逃されたとし、社会は「通貨の帝国の破壊的作用」を直視しなければならないとした。また、富の再分配と天然資源へのアクセスの公平化を求める過去の主張を繰り返した。

さらに、「人種差別は迅速に突然変異し、消滅する代わりに潜伏し、出番を待つウイルスだ」との考えを述べたほか、核兵器廃絶と死刑廃止をあらためて訴えた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


ニューズウィーク日本版 トランプ関税15%の衝撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月5日号(7月29日発売)は「トランプ関税15%の衝撃」特集。例外的に低い税率は同盟国・日本への配慮か、ディールの罠

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、FRB議長発言で9

ワールド

米、パキスタンと協定締結 石油開発で協力へ=トラン

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBが金利据え置き

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中