最新記事

後遺症

新型コロナ感染の後遺症で脳が10歳も老化する?

COVID Can Age the Brain by a Decade, Study Suggests

2020年10月28日(水)17時55分
カシュミラ・ガンダー

専門家からは、この研究結果は新型コロナウイルスが思考力の問題を引き起こすことを証明していないという批判もある。

英エジンバラ大学のジョアンナ・ウォードロー教授(応用神経イメージング)は、研究チームが新型コロナに感染する前の被験者の認知機能に関する情報を把握していなかったことから、研究成果は限定的だと述べた。この研究で明らかになった問題も、短期的な現象かもしれない、と彼女は言う。

英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのデレク・ヒル教授(医学イメージング科学)は、この研究を「興味深いが、結論は出ていない研究」と評した。新型コロナに感染したかどうかを被験者の自主申告にまかせているので、情報の信頼性が疑われる、と彼は言い、コロナウイルス検査を受けて陽性が確定していたのは、元患者の「ごく一部」だけだったことを明かした。

ヒルはまた、たとえば脳のスキャンなどでウイルス感染が脳にどんな生物学的に影響を与えたかを調べていない点を指摘した。「アルツハイマー病の認知機能低下は、MRIスキャンによって特定できる脳の収縮に関連していることはよく知られている」と、ヒルは言う。

英エクセター大学の上級臨床講師デービッド・ストレインは、非感染者と比較して10年ほど老化した一部の新型コロナ感染症患者の脳の状態は、他のウイルスによる感染症から回復した患者の脳の状態よりも「はるかに悪かった」と述べている。

今回の研究では、参加者約8万4000人のうち、ウイルス検査で陽性が確定していたのはわずか361人であったため、研究結果は確定的とはいえない。

ハンプシャーによれば、感染が確認された参加者の数が少ないのは、研究が行われた時点で、ウイルス検査を受けたイギリス人がまだ少なかったからだという。「今も研究の参加者を募集している。新型コロナ感染者が参加したら、認知能力が本当に低下するかどうかを確認するため将来にわたって追跡する」

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中