最新記事

環境

イエローストーンで魚が大量死の謎

Hundreds of Dead Fish Discovered in Yellowstone River

2020年9月7日(月)16時00分
ハナ・オズボーン

イエローストーン川では、2016年と2017年(写真)にも魚の大量死が起きている KTVQ News/You Tube

<寄生虫が媒介するウイルスによる病死と見られるが、この病気は15度以上の水温が続いた時しか表れない>

アメリカ西部イエローストーン国立公園の北を流れるイエローストーン川で、数百匹もの魚の死骸が発見され、調査が開始された。

モンタナフィッシュ・ワイルドライフ&パークス(FWP)によれば、約200匹の魚の死因はまだ確認されていないが、水中の寄生虫によって引き起こされる増殖性腎臓病(PKD)の結果と考えられている。

魚の大量死は8月末から報告され始めた。それ以降、生物学者らは状況を評価するために川のさまざまな流域を調査してきた。そしてワイオミング州、モンタナ州、ノースダコタ州を流れる約1100キロの川の一部流域でマウンテン・ホワイトフィッシュの死骸が発見された。

リビングストンの下流約15キロにわたる流域では149匹、ビッグ・ティンバーの上流15キロあまりの流域では7匹の死骸が見つかり、さらにリビングストンの上流32キロに及ぶ流域で38匹の死骸が発見された,.

FWPは、他の機関と協力して、PKDが死因であるかどうかを確認するために試験用のサンプルを研究所に提出した。

この病気はマスにも感染することが知られているが、イエローストーン川でマスに病気が流行している証拠は見当たらない。

FWPは川の状態を監視する予定だが、現在のところ川への立ち入り禁止や制限といった措置はとっていない。

なぜここで寄生虫が増殖するのか

イエローストーン川でのPKDの流行は、近年数回にわたって報告されている。この病気は腎臓の重い炎症と貧血を特徴としている。国立公園局によれば、こうした症状が発生するのは通常、長期にわたって水温が摂氏15度を超えた後だけだ。

2016年にはイエローストーン川で大規模なPKDの流行が起き、何千匹ものマウンテン・ホワイトフィッシュが死亡した。この大量死は、モンタナ州エミグラントとスプリングデールの間で発生し、その結果、300キロあまりの流域が立ち入り禁止となった。

当時、この病気の原因となるウイルスを媒介する軟胞子虫という寄生虫は、イエローストーン川にはいないと考えられていた。だが魚の大量死をきっかけに、イエローストーン国立公園を流れる川の上流にこの寄生虫が生息しているのではないかという懸念が広まった。調査の結果、軟胞子虫が広く分布していることがわかった。

「多くの地域の河川は、水の状態から見て、2016年当時のイエローストーン川と同様かもっと悪い状態にあったが、PKDによる魚の死亡は報告されていない」と、国立公園局の報告書は述べている。「これらの結果は、水温の高さと流れの悪さという条件だけでは、PKDによる魚の死を説明できないことを示唆している。この予想外の魚の連続死は、PKDという病気の全容がまだ解明されていないことを示すものだ」

(翻訳:栗原紀子)

<参考記事>孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに
<参考記事>光を99%吸収 最も黒い深海魚が発見される

【話題の記事】
ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死
老化しない唯一の哺乳類、ハダカデバネズミ「発見」の意味
コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
米大学再開をぶち壊す学生たち、乱痴気騒ぎでクラスターも発生

20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃

ワールド

シリアで米兵ら3人死亡、ISの攻撃か トランプ氏が

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中