最新記事
韓国

勉強熱心な韓国市民の愛読書はニッポン本

2019年10月9日(水)19時00分
テジョン・カン

市井の韓国人は広い文脈で日本との関係を知ろうとしている(写真はイメージ) NicolasMcComber-iStock

<日韓関係の緊張と悪化が続くからこそ客観的な情報を入手して理解しようとする動きが>

韓国と日本の緊張状態が収まる気配はなく、双方の国民も過剰なほどに反応している。韓国でいえば、日本製品のボイコット運動が全国に広がっている。

しかし意外な動きも生じている。多くの韓国人が日本製品を買わないという一方で、少なからぬ韓国人が本気で日本について勉強しているのだ。

最近、韓国で日本関連の書籍の売れ行きが急速に伸びている。特に人気は『反日種族主義』( 李栄薫[イ・ヨンフン] ほか)と題する本だ。内容は3部構成で、日本の朝鮮半島統治に関する韓国社会の通念や理解を鋭く批判している。

この夏、この本は韓国内の主要書店で飛ぶように売れたという。最大手のバンディ&ルニーズでは全国13の支店で、7週間にわたってベストセラー第1位の座を維持した。

どんな内容か。まず第1部では、日本が植民地時代の韓国で米作や土地、労働力を搾取したという通説に反論する。第2部では、なぜ韓国で反日感情が広がったかを説明する。そして第3部で、いわゆる慰安婦問題を論じている。

これ以外にも安倍晋三首相に関する本や日本の歴史・経済・政治・文化を扱った書籍の多くが、ここへきてよく売れているようだ。ネット上でも日本に関する動画やポッドキャストが人気を集めている。

韓国の歴史家が『反日種族主義』に反論した動画シリーズもあり、こちらは10日ほどで50万回以上再生された。YouTubeや韓国の大手ポータルサイト「ネイバー」などのSNSでも、韓国人の手による日本の歴史・政治・社会の解説動画がよく見受けられる。

客観的な知識が欲しい

こうした傾向の背景にあるのは、より広い文脈で日本との関係を理解したいという韓国民の思いだろう。両国間の難しい関係は今に始まったことではないが、このところの非難の応酬で深刻さを増している。

日本は8月に、軍事転用も可能な物品の輸出手続きを容易にする「ホワイト国」リストから韓国を除外すると決めた。これで両国間の緊張は高まった。日本政府は7月初めにも、半導体やスマホ画面の製造に欠かせない素材3品目の対韓輸出管理を強化しており、ますます緊張が高まっていた。

日本政府の対応がこれほど強硬になったのは、韓国側の司法判断のせいだというのが大方の見方だ。植民地時代の機微に触れる徴用工問題をめぐって、韓国の裁判所が日本企業に元徴用工への補償を命じた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、追加利上げへ慎重に時機探る

ワールド

マクロン氏「プーチン氏と対話必要」、用意あるとロ大

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中