最新記事

ブレグジット

新EU離脱協定案はイギリス経済に「相当厳しい」内容だった

2019年10月19日(土)12時31分

ジョンソン英首相(写真)が欧州連合(EU)と合意した英EU離脱(ブレグジット)協定が発効すれば、メイ前首相の案に比べてEUとの経済障壁は高まり、国は貧しくなりそうだ。ブリュッセルで撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)

ジョンソン英首相が17日に欧州連合(EU)と合意した英EU離脱(ブレグジット)協定が発効すれば、メイ前首相の案に比べてEUとの経済障壁は高まり、国は貧しくなりそうだ。

合意した協定案を実行に移すには19日の英議会採決で承認を得る必要がある。ジャナス・ヘンダーソンを運用するポール・オコナー氏は「ジョンソン首相が(議会承認を得て)合意を最終締結することができたとしても、相当厳しいブレグジットになるという認識が広がり、投資家の歓迎ムードはすぐに冷え込むかもしれない」と言う。

英財務省と大半の外部エコノミストの試算によると、EUとの貿易障壁が高まれば、EUに残留した場合に比べて英経済の成長率は低くなり、障壁が高ければ高いほど悪影響は大きくなる見通しだ。

先週示されたジョンソン氏の案に基づき調査会社「変わる欧州の中のUK」が試算したところ、EU残留の場合に比べ英国民1人当たりの所得は中期的に6%、年間2000ポンド(2570ドル)相当減少する。

メイ前首相案の場合には所得減少率は5%未満にとどまり、「合意なき離脱」になると8%超減少する。

これに対しジャビド英財務相は17日、ジョンソン氏とEUの合意によって企業の設備投資を阻んでいた不透明感が晴れるのは「自明の理だ」と反論した。

金融市場

金融市場は、「合意なき離脱」のリスクが低下したとして17日の合意を歓迎した。

しかしUBSウェルス・マネジメントのエコノミスト、ディーン・ターナー氏は、これで英国の成長率は一時的に押し上げられるかもしれないが、長期的な通商環境が不透明過ぎて設備投資の回復には結びつかないとみる。「まだ祝う気にはなれない。経済活動は少し持ち直しそうだが、英経済が低成長トレンドから抜け出せるほど有意な回復ではないだろう」

シンクタンク、欧州改革センターの推計では、2016年の国民投票でEU残留を選んでいた場合に比べ、英国経済の規模は既に約3%小さくなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡りトランプ氏との会談求める

ワールド

タイ・カンボジア両軍、停戦へ向け協議開始 27日に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中