最新記事

貿易戦争

米中が通商協議継続で合意 具体性を欠く共同声明に疑問の声も

2018年5月22日(火)10時35分

5月21日、米中両政府は、先週17─18日に開いた通商協議の成果を評価し、双方が交渉での「勝利」を宣言した。写真は18日、ワシントンで撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

米中両政府は21日、先週17─18日に開いた通商協議の成果を評価し、双方が交渉での「勝利」を宣言した。

5月初めの第1回会合に続く2回目の米中通商協議では、両国政府は貿易戦争への突入を回避し、中国が米国の製品やサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した。ただ、具体的な額や時期などの詳細はほとんど示されていない。また共同声明では、米国が中国に求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減への言及もなかった。

ムニューシン米財務長官は20日、テレビ番組で「(米中)貿易戦争を保留にする。関税措置をいったん保留にすることで合意した。一方、枠組みの執行は目指していく」と発言。

また、農業分野の中国向け輸出は今年だけでも35─40%増加し、エネルギー分野の輸出に関しては向こう3─5年で2倍になると述べ、公表はしないが業界別に特定の目標があると述べた。

今回の協議で最大かつ直接の恩恵を受けたのは中国とみられる。米国は知的財産権侵害などを理由に中国からの輸入品総額500億ドル相当に制裁関税を科すとしていたが、米国は関税導入を猶予した。また、トランプ米大統領は、米国の制裁によって存続の危機にある中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)<000063.SZ><0763.HK>の事業再開を支援する方針を表明している。

一方の米国は、今回の協議で中国側から米国からの輸入を拡大する約束を取りつけたが、詳細は詰められていない。

モルガン・スタンレーの試算では、米国が主に牛肉などの農産物と液化天然ガス(LNG)を中心とするエネルギーの中国向け輸出を拡大する場合、輸出額は数年間で600億─900億ドル増える可能性がある。ただ、これは米国が中国に要求する貿易黒字削減幅2000億ドルには程遠い。

トランプ米大統領は21日、中国が米国産農産物製品を「大量に」購入することに合意したとツイッターで発表したが、合意の具体的な内容には言及しなかった。

中国の国営英字紙チャイナ・デイリーは、緊張緩和に誰もが安どのため息をつくことができるとの社説を掲載。「(協議は)前向き、実際的、建設的、生産的」だったとの劉鶴副首相の発言を引用した。同紙は「あらゆるプレッシャーにもかかわらず、中国は折れなかった。断固たる態度で臨み、引き続き協議の意思を示した」とし、「米国が最終的にこの意思を共有したことは、一時は不可避とみられていた正面対決を双方がうまく回避したこと意味する」と指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀の情報発信、利上げ判断につながる変化 円安を警

ワールド

米感謝祭休暇の航空需要が縮小、政府閉鎖が影響

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

アングル:ケネディ暗殺文書「押収」の舞台裏、国家情
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中