最新記事

トランプよ、北朝鮮の非核化だけでなく自国の軍縮プルトニウム問題も解決せよ

2018年5月1日(火)15時00分

4月20日、細心の注意を要し、生命の危険にさらされかねない核弾頭の廃棄作業は、ほとんど知られていないが、緊急度を増している。写真はトランプ米大統領。ワシントンで昨年6月撮影(2018年 ロイター/Carlos Barria)

テキサス州アマリロ近郊に無秩序に広がる工場では、多くの作業員が手作業で米国産業で最も危険な仕事に従事している。契約作業員たちが、退役した核弾頭からプルトニウムの核(コア)を慎重に除去しているのだ。

米エネルギー省管轄のパンテックス工場では、多くの安全規則にのっとって作業しているものの、手元が狂えば大惨事になりかねない。

全米各地にある同省施設には、余剰プルトニウム54トンが保管されている。パンテックス工場では「ピット」と呼ばれるコア2万個超が保管されており、規則によってそれらは同工場の一時保管施設で保有することが許されている。数千メガトン規模の核爆発を引き起こすのに十分なコアが保管されており、日々その数は増えている。

細心の注意を要し、生命の危険にさらされかねない核弾頭の廃棄作業は、ほとんど知られていないが、緊急度を増している。米国とロシアが2010年に合意した核新戦略兵器削減条約(新START)が定める核弾頭数の上限1550発を超えてはならないからだ。

米国は古い核弾頭を廃棄して、より殺傷能力の高い最新兵器と一部交換したいと考えている。ロシアも新たに危険な兵器開発を進めている。

米国は大量のプルトニウムを保有しており、テロリストはそれらを手に入れたいと狙っている。米ロはまた、両国間で締結した別の協定により、それぞれ34トンに上る兵器級の余剰プルトニウムを処分しなければならない。

これには2重の意味がある。1つは、プルトニウムが悪人の手に渡ることを阻止すること。そしてもう1つは、米ロ自身が再び兵器に使用する可能性を排除することだ。米エネルギー省のウェブサイトによると、両国合わせた計68トンの余剰プルトニウムは、核兵器1万7000発を製造するのに十分な規模だという。だが米国は、自国が処分しなければならない34トンについて、永続的な計画をもたない。

放射能半減期は2万4000年であるため、プルトニウムは永久に隔離されなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 10
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中