最新記事

ロシア

ロシアが誇る「無敵」核兵器をアメリカは撃ち落とせない

2018年3月7日(水)17時50分
トム・オコナー

ロシアが開発中の新型ICBMには多数の核弾頭を搭載できるという Russia Today/YOUTUBE

<プーチンが大統領選直前の演説で披歴したロシアが開発中の最新核兵器の数々。アメリカの防衛システムを回避できるというプーチンの言葉は嘘ではない>

3月18日実施予定のロシア大統領選で再選が確実視されているウラジーミル・プーチン大統領。その選挙を目前に控えた1日に行った年次教書演説で、核弾頭を搭載可能な一連の新兵器を披露した。世界最先端のミサイル防衛システムでも阻止できないと豪語した。

プーチンの言葉は嘘ではない。ロシアは現在、核弾頭を搭載し、アメリカの防衛システムを突破する能力を持つミサイルを複数開発している。具体的には、西側諸国の北大西洋条約機構(NATO)から「SS-X-30サタン2」と呼ばれる新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「RS-28サルマト」。さらに、原子力エンジンを搭載した巡航ミサイルや、大陸間の海中を進む戦略核魚雷「カニヨン」、さらに、超音速ミサイル「キンジャール」などだ。

プーチンは、ロシア政府はこうした「迎撃システムを回避する」兵器の開発計画を14年近く前から明らかにしていたと述べ、兵器を開発する大義名分について語った。

「ロシアはなぜこうした兵器を開発するのか? そしてなぜ公にするのか? ご覧の通り、ロシアは兵器開発計画を全く隠すことはなく、オープンに語っている。これは第一に、パートナーに対して対話の機会を持つよう促すためだ。もう一度繰り替えそう。ロシアは2004年から明らかにしている。経済や金融、そして防衛産業がさまざまな問題を抱えているにもかかわらず、ロシアが核大国の座を維持しているのは実に驚くべきことだ」。プーチンは演説で、議員たちを前にこう語った。

「しかし、誰も問題の核心について、ロシアと話をしようとせず、ロシアの声に耳を傾けなかった。今ならこちらの話を聞くはずだ」と、プーチンは続けた。

(プーチンが言及した新型核兵器について報じるロシア・トゥデイのニュース動画)

開発が遅れているICBM「RS-28サルマト」は、750キロトンの破壊力を持つ核弾頭を10または15基搭載可能とされている。これは、老朽化が進むRS-36M(冷戦のさなかの70年代には、NATOにより「SS-18サタン」と呼ばれていた)の代替兵器と位置づけられている。

RS-28サルマトは、北極上空を通るルートに限定される従来型のICBMと違い、南極経由のルートを取ることもできる。米外交専門誌ナショナル・インタレストによれば、このICBMを迎え撃つアメリカの弾道弾迎撃ミサイルはわずか30基しか配備されていない。さらに、完璧に条件を整えた実験でも、ミサイルを迎撃できる可能性は50%しかない。

プーチンはRS-28サルマトについて、「射程距離には事実上制約がない」と語り、「世界最先端のミサイル防衛システムにも捕捉されない」とその性能を強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中