最新記事

SNS

上位表示20%が偽情報のTikTok──偽医療情報だけでなく、政治に関するフェイクもいっぱい

Beware the “New Google”

2022年11月2日(水)13時56分
ジャック・ブリュースター(ニューズガード上級アナリスト)
TikTok

若者に人気のTikTokだが、検索結果の上位にはしばしば偽情報が表示される PHOTO ILLUSTRATION BY NEWSWEEK, SOURCE PHOTO BY BORIS ZHITKOV/GETTY IMAGES

<親会社バイトダンスには中国政府も出資。アメリカ大統領選や、ロシアによるウクライナ侵攻と虐殺を捏造とする動画も。若者に人気があるだけに、どう付き合えばいいのか?>

「アローハ、皆さん!」

キッチンに立つ若い女性がスマートフォンの画面からほほ笑みかける。「3日か4日前、私、いま流行してるやつをすっかり治せる薬を作ってみた。ヒドロキシクロロキンって言うの」

ヒドロキシクロロキンはマラリアなどの治療薬だが、新型コロナウイルスがアメリカに上陸した頃、当時のドナルド・トランプ米大統領が感染予防に効くと吹聴し、大いに話題になった。

ただし、後にほとんどの専門家や米規制当局によって、そのような効能は全否定されている。

この女性は、次に黄色っぽい濃厚な液体の入った大きなボトルを見せ、「グレープフルーツの皮とレモンの皮を合わせて、じっくり煮詰めた。これで、あいつを治せる。覚えてね、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、これで何でも治せるの」と言った。

動画共有アプリTikTok(ティックトック)のホームページで「ヒドロキシクロロキン」を検索したら、2番目に表示されたのがこの動画だ。

検索結果の上位20位には、ほかにもこの薬品の「手作り」を推奨する動画が3本含まれていた。言うまでもないが、ヒドロキシクロロキンは処方薬であり、家庭で作れるものではない。

「新しいグーグル」に?

私たちニューズガード(ネット上の情報サイトの信憑性を格付けする民間団体)が調べたところ、主要ニュースに関する情報をTikTok(ユーザーの大半は青少年)で検索すると、決まって虚偽または怪しげな主張が表示された。

あくまでも部分的なサンプリング調査だが、検索結果として上位に表示された動画のほぼ20%には偽情報が含まれていた。

この点についてコメントを求めると、TikTokの広報はこう答えてきた。

「(当社はコミュニティー・ガイドラインで)医療関係を含む有害な偽情報を許容しないと明示しており、該当するものは削除している。公衆衛生に関する事項では判定を権威付けするために信頼できる筋と協力しているし、中立的なファクトチェッカーと提携して内容の正確性を評価している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

消費税は大切な財源、安定財源なしの無責任な減税でき

ワールド

ウクライナ首都と周辺に夜間攻撃、8人死亡・多数負傷

ワールド

イスラエル、イラン首都に大規模攻撃 政治犯収容刑務

ワールド

ゼレンスキー大統領、英国に到着 防衛など協議へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中