最新記事

育児

子供の寝かしつけ 専門家の意見が一致する一番の方法は?

2018年4月9日(月)19時09分
ラーナ・フォルーハー

IMAGENAVI/GETTY IMAGES

<長時間続けて眠ることのない赤ちゃんだが、特徴的な眠りこそが発達と深く結び付いている。なぜ頻繁に目を覚ますのか。そして、どうやって健やかな眠りに導けばいいのか。本誌SPECIAL ISSUE「0歳からの教育 発達編」より>

すやすや眠る赤ちゃんといえば、熟睡の代名詞のように思われがち。だが実際は、2時間おきくらいに目を覚ます(そして大泣きする)のが特徴だ。親がこの睡眠パターンに付き合うのは並大抵のことではない。

生まれてすぐの赤ちゃんは1日に12~18時間眠るが、おなかがすいて2~3時間おきに目を覚ます。生後半年くらいになると1日の睡眠は11~12時間程度に減るが、やはり頻繁に(夜中でも構わず)目を覚ます。5歳ぐらいになっても、1日10時間以上眠ることは珍しくない。乳幼児の睡眠パターンは十人十色だ。夜に7時間、昼間に5時間という子もいれば、夜に3時間の睡眠を4回繰り返す子もいる。

朝までぐっすり眠ってほしいというのが親の本音だろう。だが人間は「生後数年間は夜通し、または長時間続けて眠るようにはなっていない。そう長く眠っても、赤ちゃんのためにはならないだろう」と、ノートルダム大学母子行動睡眠研究室のジェームズ・マッケナ教授は語る。その理由は複雑で、完璧な答えはまだ見つかっていない。

環境が睡眠を左右することは確かだ。例えばミルクで育てられている赤ちゃんは、母乳の赤ちゃんより早い時期から比較的長くまとめて眠る傾向がある。母乳は消化がよく、空腹をすぐに感じるからだ。親と別のベッドで寝る子は親から余計な刺激を受けず、添い寝の子ほど頻繁に目を覚まさないかもしれない。

頻繁な目覚めは生存本能

幼い子供に長時間の睡眠が必要なのは、睡眠と成長が深く結び付いているからだ。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠中の脳は覚醒に近い状態で活動している(夢を見るのはたいていこのとき)。脳も体も休息状態のノンレム睡眠には第1~4段階があり、成長ホルモンが分泌されるのは眠りが深い第3~4段階。赤ちゃんの睡眠時間に、こうした深い眠りが占める割合は約50 %になる。これが65歳以上では3~5%だ。

レム睡眠の時間も大人より長い。目が覚めやすいから、赤ちゃんが長く眠れないのも無理はないだろう。レム睡眠は記憶の定着に重要な役割を果たしていると専門家はみている。赤ちゃんはレム睡眠の間、起きているときに見たり聞いたりしたことを処理し、意味を理解しているのではないかということだ。

ほとんどの小児科医が、レム睡眠が頻繁に訪れること(そして目を覚ましやすいこと)の根底には生存本能があると考えている。小児科医ウィリアム・シアーズは、生後まもない赤ちゃんは世話をしてもらう必要性が最高レベルにある半面、コミュニケーション能力は最低レベルだと指摘する。「赤ちゃんが夜のほとんどをぐっすり眠って過ごしたら最も基本的な欲求──暖かくしてほしいとか、おなかがすいたとか──を親に気付いてもらえないかもしれない」

【参考記事】赤ちゃんは痛みを感じない、と30年前まで考えられていた

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中