最新記事

ゲーム

新型コロナの不安を『どうぶつの森』が癒やすワケ

A Game for Surviving COVID-19

2020年4月23日(木)19時15分
ケリー・ウィン

プレーヤーはマイペースで島を発展させていく NINTENDO

<長期的に家から出られなくても、任天堂の新作『あつまれ どうぶつの森』で外遊びしたり仲間と交流すればマインドフルネス効果が>

新型コロナウイルスの感染拡大で家から出られない昨今でも、自然に親しみDIY(日曜大工)的生活を楽しむ方法はある。ニンテンドースイッチ用の新作ゲーム『あつまれ どうぶつの森』に没頭すればいい。

実際にプレーしている人々からは、癒やし効果があると歓迎する声が上がっている。幸せで脅かすものもないこの島で過ごせば、コロナ関連のニュースで頭がいっぱいにならずに済むということだろう。精神衛生の専門家からも、緩いストーリーやゲーム内で行う魚釣りや虫捕りなど、のんびりしたペースの活動には「マインドフルネス」に近い効果が期待できるとの見方が出ている。

「危機のただ中にある今、楽しめるものを見つけるのは本当に大切だ」と語るのは、若者の不安に関する著書のある臨床心理士のレジーン・ギャランティだ。「自分が楽しいと思える活動に取り組む時間があれば、全く先の見えない世界で自分を支える気晴らしになり得る。今回の危機において、自分にとって楽しく意義ある活動を見つけることはとても役に立つ」

ギャランティは、テレビやインターネットからひっきりなしに流れてくるコロナ関連の暗いニュースが人々の不安の引き金を引く可能性を懸念する。「ニュースと距離を置いたり、ニュースの消費量を減らすのはいいことだ。つまり『どうぶつの森』のようなゲームに意識を向けることは、不安症状を悪化させることなく自分と向き合う優れた方法だ」と彼女は言う。「目下の状況では、(現実から)逃避しようとするのはまさに健康的な行為と言える」

現実逃避も時には必要

内面の不安に真正面からじっくり取り組むというのはセラピーの常道だが、それも時と場合による。認知行動療法を行う施設を運営するデブラ・キッセンは「最悪の事態が起こるという可能性」から目をそらすことも必要だと述べた。

「先の見えないことだらけな半面、やることがないという現状では、脳が大混乱を起こしかねない」とキッセンは言う。「人間は何かやることを脳に与えることで喜びを感じるからだ」

ゲームで気晴らしができることだけが心を癒やす効果につながるのではない。注目すべきは『どうぶつの森』がつくり出す世界だ。暴力は出てこないし、決まった筋書きもない。大まかな目標(ひたすら町や家を大きくし、ひたすら働いて無利子のローンを返済し続けること)はあるものの、日々の過ごし方はプレーヤーに任されている。

魚釣りや雑草抜き、花の水やりといった一見すると地味な活動も、実生活で簡単に外出できない現状では癒やしになり得る。ゲームの中でなら、戸外に出て充実した時間を過ごすことができるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中