最新記事

エンターテインメント

デーブ・スペクター「吉本」「日本の芸能事務所」「テレビ局との癒着」を全て語る

2019年7月26日(金)17時55分
小暮聡子(本誌記者)

日本は素人から「育てる」ことが好き

アナウンサーだってそう。日本のテレビ局は大学を卒業して、新卒でまったくの新人を入れているが、アメリカでは考えられない。全てローカル局から上がっていく仕組みで、いきなり大都市で全国放送のキャスターになるというのはあり得ない。

日本は大学を出てそのまま入ってくるので、結局はド素人。一からいろいろ教えて30そこそこでフリーになる。アメリカで30歳なんて、ようやく少し大きいところにやっと出られるくらい。

日本のおかしいところはそこだ。つまり素人芸、素人の段階でも受け入れてくれる。優しいと言えば優しいのだが、実力も経験もまだないのに入れてしまうという。何もできない12歳の子でも事務所に入れて、実習見習いみたいな形でゼロからスタートする。それはあまりよくない。

日本に特徴的なのは、例えばアイドルとか、見習い的に素人の段階でテレビに出させる。松田聖子さんとか、デビューしたてはぎこちなくて歌唱力もまだそれほどなくて、でもかわいいじゃないですか。それで、どんどん上手くなっていって、気が付くとものすごく上手。

アイドルを見て僕がいつも言っているのは、盆栽のようにゆっくりと育てていく楽しみがあると。アメリカでは出来上がった盆栽しか買わない(笑)。日本は、作っていくというそのプロセスを楽しんでいる。

――見ている側もそのプロセスを楽しんでいると。

大好きでしょう。子役から上がっていくとか、まだ下手だけどだんだん上手になっていくとか。ジャニーズだって、例えばSMAPもそうだが、最初はただの男性アイドルでも、いつの間にか演技もできるとか役者になっていたり、中居(正広)くんみたいに面白いMCもできるとか、目の前で変わっていく。視聴者も一緒に育てているので、それこそ観る側も「ファミリー」だ。だからあまりシビアにうるさく見ないという、いい面もある。

そもそも日本で「素人」というのは、悪い意味ではない。「新人」とか素人が大好きで、企業だっていまだに新卒を雇う。アメリカは経験がない人を好まない。キャスターになりたい人は必ずジャーナリズムスクールに行く。大学在学中にインターンをしたり、専門的な勉強をして職業訓練をしてから、就職する。

だが日本は漠然とした学歴しかなく、専門学校を出ている人のほうがすぐに役に立つくらいだ。メディアだけではなく商社など一般の企業でもいまだに新卒を雇って、入社してから社員教育をし、人事異動を繰り返して浅く広くいろいろなことを学んでいく。

日本社会がそうなっているので、芸能界はその延長線上にあるに過ぎない。だから違和感も抵抗もない。なぜアイドルとか下手な人たちに抵抗がないかというのは、日本社会にそういうベースがあるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回

ビジネス

UBS、主要2部門の四半期純金利収入見通し引き上げ

ビジネス

英賃金上昇率の鈍化続く、12─2月は前年比6.0%

ビジネス

日産、EV生産にギガキャスト27年度導入 銅不要モ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中