最新記事

エネルギー

米制裁で石油タンカー運賃高騰 アジア向け大型原油タンカーは15億円に

2019年10月11日(金)17時57分

米国の対イラン、対ベネズエラ制裁の影響で、世界的にタンカー運賃が高騰している。写真はオイルタンカー。マルセイユ沖で8月撮影(2019年 ロイター/Jean-Paul Pelissier)

米国の対イラン、対ベネズエラ制裁の影響で、世界的にタンカー運賃が高騰している。商社や石油会社などが制裁違反を恐れ、両国の石油を運んだ実績のあるタンカーを利用しなくなったため、「使えるタンカー」が限られ、アジア向けを中心に石油タンカー運賃が跳ね上がっているという。

実質利用できないタンカーは300隻近く。業界関係者やリフィニティブのアイコンのデータによると、世界の石油タンカーの約3%に相当する。

アジアの原油トレーダーは11日、「運賃は天井知らずに上がっており、人々は輸送コストに神経をとがらせている」と述べた。

中国石油化工(シノペック)傘下の石油取引会社ユニペック、スイスの資源商社トラフィギュラ、ノルウェーのエクイノール、米エクソンモービルはここ1年、ベネズエラ産原油を運んだ実績を持つ250隻のタンカーの利用をやめている。

このほか米国が前月、対イラン制裁に違反してイラン産原油を運んだとして制裁を科した中国遠洋海運集団(COSCO)大連所有のタンカー43隻も使われなくなった。

COSCO大連は、世界の3%相当の大型原油タンカー(VLCC)も所有。このため、VLCC運賃はここ2週間、最高値を連日新しているという。

アジア向けのVLCC運賃は、米国の制裁強化を受けてここ数カ月、高騰している。

商社筋によると、ペトロチャイナの子会社が11月初めに中東産原油を中国に運ぶためにチャーターしたVLCC運賃はワールドスケール(WS)205で過去最高となる見込み。制裁発動前はWS67だった。

航行距離が最も長い米国からアジア向けのVLCC運賃は今週、過去最高の1400万ドルを記録した。

[メキシコ市/シンガポール 11日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中