最新記事

シェアキッチンで配達専業 ネット食品配送4位の韓国に世界が群がる

2019年7月18日(木)14時28分

シェフのユン・ジュンフィルさんは今月、富裕層が集まるソウル市江南区にある自分のレストランを閉店しようとしている。写真は6月、ソウルの街を走るフードデリバリーのバイク(2019年 ロイター/Kim Hong-Ji)

シェフのユン・ジュンフィルさんは今月、富裕層が集まるソウル市江南区にある自分のレストランを閉店しようとしている。店内で飲食する顧客数が減っているだけでなく、人件費と家賃の高騰にウンザリしたからだ。

外食産業で20年近い経験を持つユンさんが選んだ新しい道は、米配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズ共同創業者のトラビス・カラニック氏が経営する厨房賃貸サービス「クラウドキッチンズ」で16.5平方メートルの厨房を借り、得意のアボカドバーガーとベーグルをデリバリー専門で販売する方式だ。

「毎日が不安だ。これまでにやったことがない方法だから、よく眠れない」と、クラウドキッチンズからの売り込みを受けたユンさんは言う。

「とはいえ、リスクは低いし、高いコストを掛けずにさまざまなメニューを実験するチャンスになるだろう」と彼は言う。家賃負担は約3分の2ほど減るという。

オンラインでの食品注文で世界第4位の市場である韓国は、総人口に比してレストランの絶対数や食品デリバリーの購入額が多い。

これに加え、過去2年間で最低賃金が30%近く引き上げられたことが、シェアキッチン利用・デリバリー限定というビジネスへの急速なシフトを後押ししていると、業界幹部や投資家は指摘する。これは従来の外食産業を脅かす変化だ。

事情に詳しい人々によれば、米ロサンジェルスを本拠とするクラウドキッチンズが自社ブランドで海外市場に参入するのは、韓国が最初だという。

投資会社スパークラブズのジミー・キム最高経営責任者(CEO)は、「カラニック氏をはじめとする投資家たちが韓国市場に参入したことは、シェアキッチン産業にとって韓国が魅力的な市場であることを物語っている。市場規模は大きく、米国よりも成長ペースが速い」と語る。

クラウドキッチンズ初の韓国店は5月に、江南区の裏通りにひっそりとオープンした。複数の情報提供者は、内部には、区分けされたキッチンが20以上設けられていると明かす。さらに10カ所の出店計画があり、そのうち6カ所は今年オープン予定だという。

事情に詳しい4人の情報提供者によれば、クラウドキッチンズは今年、地元企業のシンプルキッチンを買収した。スパークラブズも出資しているシンプルキッチンは以前、2019年末までにレストラン500店を顧客とする25カ所の店舗を計画しているとしていた。

ロイターではクラウドキッチンズとシンプルキッチンにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国GDP、第2四半期は5.2%増で予想上回る 米

ワールド

インド6月卸売物価指数、前年比-0.13% 19カ

ビジネス

午前の日経平均は小反発、国内金利上昇で上値重い 金

ワールド

7─9月の石油需要「非常に強い」=OPEC事務局長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中