Picture Power

父として、子として 知った生の意味

Fathers and Sons

Photographs by Christopher Anderson

父として、子として 知った生の意味

Fathers and Sons

Photographs by Christopher Anderson

ニューヨークのアパートの窓から雨を見詰める息子のアトラス

 写真家のクリストファー・アンダーソンはこれまで輝かしいキャリアを築いてきた。
写真家集団マグナムの一員として、著名人のポートレートからボートで亡命を図るハイチ難民、さらに戦地のイラクやアフガニスタン、紛争地のパレスチナやレバノンに暮らす人々の感情を写真で表現してきた。

 紛争地を駆け巡る写真家として数々の報道写真賞を獲得してきた彼だが、08年に息子アトラスが誕生してすべてが変わった。くしくも同時期に父親のリンが癌になり、紛争写真から距離を置いて目の前の生と死に向き合った。「これまで見知らぬ人の経験を撮影するために遠方に旅をしてきたが」と、アンダーソンは言う。「私のこれまでの写真は、自分のものではない感情と私をつなぐものだった」

 そう悟ったアンダーソンは、「息子」アトラスの父親として、また闘病中であるリンの「息子」として、彼らの姿を切り取った。そしてこれまでの写真家生活が、今回の写真を撮るための準備にすぎなかったと気付く。写真が自らの感情を伝える媒体になったのだ。こうして撮影された作品が、写真集『Son』にまとめられた。

Photographs from "Son" (Kehrer Verlag) by Christopher Anderson/Magnum Photos Tokyo

<2013年10月22日号掲載>

関連リンク:
「Son」(独ケーラー出版)

MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中