コラム

「乳児はへその緒を割れた石で切られ」 戦争から逃れても、気候災害でさらなる絶望へ...難民の悲惨な現実

2024年11月22日(金)17時17分
戦争に追われた難民を気候災害がさらに追い詰める

スペイン領カナリア諸島のキャンプで生活する難民の男性 Borja Suarez-Reuters

<世界で避難を余儀なくされている人は1億2000万人以上と、過去10年で2倍に。そのうち9000万人が気候変動に関連する危険の高い国で暮らす>

[バクー発]「気候危機は人間の危機だ。世界中の何百万という人々が暴力や紛争、気候変動に関連する災害のため家を追われている。今日、世界で強制的に避難を余儀なくされている人々の数はかつてないほど増えており、過去10年間で2倍の1億2000万人以上にのぼっている」

■【写真】「乳児はへその緒を割れた石で切られ...」 自身の難民生活の経験を語ったグレース・デュロングさん

アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で発表された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書「逃げ場はない。気候変動、紛争、強制移住の最前線で」は訴える。

「紛争が避難の主な原因であることに変わりはない。しかし気候変動はこの壊滅的な現実をさらに悪化させる恐れがある。避難民は洪水、干ばつ、熱波といった災害への備えにも苦労している。9000万人の避難民が気候変動に関連する危険の高い国で暮らしている」

極端な気候災害に直面する国は65カ国に激増

過去10年間で気候災害は1日当たり約6万人に相当する2億2000万人の国内避難を引き起こした。昨年はその4分の1以上が紛争の影響を受けた脆弱な環境で起きている。2040年までに極端な気候災害に直面する国は3カ国から65カ国に増加すると予想される。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市首相、「進撃の巨人」引用し投資アピール サウジ

ビジネス

中国の住宅価格、新築は上昇加速 中古は下落=民間調

ワールド

ベネズエラ国会、米軍の船舶攻撃を調査へ 特別委設置

ワールド

イスラエルの攻撃による死者数、7万人突破=ガザ保健
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story