コラム

現金主義は壮大な無駄遣い――キャッシュレスは日本経済を救う?

2019年12月19日(木)11時30分

飲食店や小売店も同様である。現金決済に対応するためには、釣り銭の確保や金庫の管理、現金輸送といった手間がかかるため、より多くの人員を配置する必要がある。人手不足が深刻な現状において現金決済に伴う小売店の負荷は大きい。現金の取り扱いに関する人件費は年間5000億円にも達するといわれており、この労働力が他の生産にシフトすれば、その分だけGDPは増加するだろう。

キャッシュレスへの移行が急ピッチで進んだ場合、景気の浮揚効果も期待できる。もし、ほとんどの決済がキャッシュレスで済むようになった場合、現金を大量保有する動機が薄れるため、消費者は手元の現金を減らす可能性が高い。この動きは貨幣需要を減少させ、金利低下によって一時的には金融緩和と同様の効果をもたらす可能性がある。

景気の浮揚効果まで得られるかはともかく、現金決済にかなりのコストがかかっていたのは事実で、キャッシュレス化の進展はこうした社会コストの削減につながる。日本では「消費者が事業者に過度に便利さを要求するのはわがまま」との世論が強くなってきたが、もしそうなら事業者に過大な負担を強いる現金決済は、徐々に消えゆく運命ということになるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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