コラム

旧統一教会をたたけば全てが終わるのか? 

2022年08月17日(水)11時30分

一方で、銃撃事件を機に自民党の最大派閥である安倍派の弱体化がささやかれるが、それが外交に及ぼす影響はどうか。

645年の蘇我入鹿の暗殺など、奈良周辺で起きた事件は日本政治を変えてきた。入鹿暗殺は外交路線の硬化、唐に対抗した朝鮮半島への介入、そして白村江の戦いでの大敗という結果を生んだ。今回は右派系の声を代表している安倍派が力を失い、穏健系の岸田派が外交・防衛政策の主導権を握る。

核廃絶などの穏健路線は、平時にはいいことだが乱世では危険を招く。「台湾の有事は日本の有事」という安倍元首相の言葉は前のめりにすぎると思うが(台湾に自衛隊の出動を期待させてしまう)、ペロシ米下院議長の台湾訪問後に中国軍が示した行動への対応は日本の無力さを切実に感じさせた。

中国軍が台湾を封鎖する際には、台湾至近の与那国島などを必ず制圧しようとする。今のままでは台湾支援はおろか、日本は自国領である南西諸島の防衛さえおぼつかない。

排他的経済水域(EEZ)にミサイルを撃ち込まれても口先の抗議をするだけだった。むやみに衝突するのは避けるべきだが、中国に警告を発するカードは準備しておくべきだ。

旧統一教会の問題は論理がいろいろひっくり返っていて真面目に考えれば考えるほど混乱する。せめて外交・防衛問題では正常な論理が通るようであってほしい。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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