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NISAとは? メリット・デメリットと2024年からの制度の変更点を紹介

2024年02月01日(木)10時09分

NISAとは

NISAとは

NISA(少額投資非課税制度)は、2014年1月に始まった個人投資家のための税制優遇制度。株式・投資信託で得た利益にかかる税金が非課税になる。名称はイギリスで同様の制度であるISA(Individual Savings Account)をモデルにしていることから、NISA(Nippon Individual Savings Account)となった。

制度の利用は、証券会社や銀行などNISAを取り扱っている金融機関に口座開設を申請する。保有できるNISA口座は1人1つまでとなるため、口座申請後には税務署の確認もある。

対象は20歳以上であるが、2016年には20歳未満を対象にジュニアNISAを開始。2018年には、長期投資に適した投資信託に投資することを目的としたつみたてNISAが生まれた。2024年には、現行の制度を大きく改正した新NISAが誕生する。

2024年のNISA制度の改正は前々から予定されていたものであったが、制度の改正内容は二転三転している。当初は1階部分で投資信託の積立投資を行ってから、2階部分で株式などの幅広い投資ができる2階建てNISAが予定されていたが、令和5年度税制改正をもって現行の制度が採用され見送られた。

NISA制度の変更点

NISA制度は、株式、投資信託など幅広い投資対象に投資できる成長投資枠(一般NISA)、長期の積立投資に適した投資信託に投資できるつみたて投資枠(つみたてNISA)の2つの投資枠で成り立っている。

2024年以降のNISA制度と以前の制度の違いを以下にまとめた。

新NISA

以前のNISA

成長投資枠

つみたて投資枠

一般NISA

つみたてNISA

年間投資枠

240万円

120万円

120万円

40万円

非課税限度額

1,800万円

600万円

800万円

非課税期間

無期限

5年

20年

制度の併用

できる

できない

投資対象

株式、投資信託

投資信託

株式、投資信託

投資信託

 

年間投資枠・非課税限度額の拡大

年間投資枠とは、NISA制度を活用して投資できる上限額である。以前のNISAでは一般NISAが120万円、つみたてNISAが40万円であったが、新NISAでは成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円となり、各投資枠の上限が2~3倍に拡大している。

さらに、非課税限度額も拡大しており、一般NISAを選択した場合は600万円、つみたてNISAを選択した場合は800万円であったが、新NISAでは両方合わせて1,800万円の上限となった。

 

非課税期間が無期限

以前のNISAでは一般NISAとつみたてNISAに非課税期間が設定されていた。NISAで運用を開始し、非課税期間を過ぎると投資商品が自動的にNISA口座から特定口座に移管され、移管後の利益には税金がかかる。

しかし、新NISAでは非課税期間を廃止。すべての投資枠において無期限で運用できるようになった。非課税期間の廃止に伴い、非課税限度額は生涯投資枠とも呼ばれるようになり、生涯投資枠を上限として運用することになる。

 

成長投資枠とつみたて投資枠を併用できる

一般NISAとつみたてNISAは併用できなかったが、新NISAは事実上、以前の2つの制度を合体させた制度である。以前の制度において一般NISAにあたる成長投資枠とつみたてNISAにあたるつみたて投資枠のどちらも併用できる

よって、成長投資枠・つみたて投資枠を合算して年間360万円の投資も可能だ。一般NISAを選択していた場合、全体の投資枠の増枠は3倍。つみたてNISAを選択していた場合の投資枠は9倍であり、併用可能になったことで全体の投資枠が大きく増加している。

NISAのメリット

 

売却益や配当金に税金がかからない

NISA口座で購入した株式・投資信託から発生した売却益、配当金・分配金に税金はかからない。株式・投資信託の利益には所得税・住民税、2037年までは復興所得税がかかるため、20.315%の税金がかかる。

非課税期間が無期限になったことから、配当金が出る日本株を保有する場合は、毎年の配当金に対して税金の徴収を受けず、期限なく保有を続けられる。つまり、生涯にわたって税金の徴収を受けずに配当金を受け取り続けることも可能だ。

 

いつでも売却可能で非課税限度額が復活する

NISA口座の投資商品はいつでも売却可能である。また、売却すると売却した分の投資枠が翌年度以降に復活する仕組みだ。

例えば、240万円分の株式を成長枠で初めて投資すると、残りの非課税限度額は1,560万円になるが、これを売却すると翌年度に非課税限度額が1,800万円に復活する。

非課税限度額が決まっており、上限に到達すると新たに投資できなくなるが、売却すれば枠が復活し、新たな投資対象に投資できるようになる。

 

年間投資枠の範囲内であれば取引の自由度が高い

NISAは年間投資枠の制限はあるものの、日本株に限らず米国株にも投資できるなど投資対象が広い点や、NISA口座内の投資商品はいつでも売却できるなど、取引の自由度が高い。

同様の資産形成の税制優遇制度であるiDeCoと比較すると、iDeCoは60歳までの中途解約や資金の引き出しができない点や、株式などに投資できない点からNISAと比較すると制限のある制度だ。

成長枠とつみたて投資枠の両方を活用し、1年以内の短期や、数年以内の中期を見据えた投資と、10年以上の保有を前提とした長期投資をバランスよく行うことも可能だ。取引に慣れている個人投資家であれば、自由度の高さは魅力である。

NISAのデメリット

損益通算ができない

投資の節税には損益通算がある。損益通算は、投資商品で発生した損失を利益と相殺することで支払う税金を減らせる。例えば、10万円の損失が発生したとき、15万円の利益があれば、本来は15万円の利益に対して税金を支払うところ、利益から損失を差し引き、「15万円-10万円=5万円」分の利益に対して課税される仕組みだ。

しかし、NISA口座で損失が発生した場合、他の特定口座で発生した利益と損益通算はできない。NISAの利益には税金がかからないが、損失もまた税務上はないものとみなされる。利益を出せれば節税メリットが大きいが、損失を発生させた場合は損益通算ができないデメリットもある。

成長投資枠の非課税限度額に制限がある

非課税限度額は1,800万円であり、つみたて投資枠で投資する場合には制限がない。しかし、成長投資枠で投資する場合は1,200万円までしか投資できない制限がある。成長投資枠を中心にNISAを最大限に活用するなら、つみたて投資枠に600万円の投資が必要だ。

成長投資枠には実質的な上限が設定されていることから、成長投資枠で株式のみに投資する場合は非課税限度額が1,200万円となるため、つみたて投資枠の利用者と比較して非課税で投資できる金額は減少する。

米国株・ETFの配当金には税金がかかる

NISAでは基本的に利益に税金がかからないが、例外として、米国株・米国ETFの配当金・分配金には税金がかかる。米国の投資商品の配当金・分配金には、米国現地の税金と日本の税金がかかり、NISAで保有する場合は日本の税金はかからないが米国現地の税金は徴収される。

米国現地の税金と日本の税金の両方が徴収されることは二重課税になる。特定口座で配当金・分配金を受け取った場合は、二重課税を調整する外国税額控除の申告ができるため、所得税・住民税から控除が受けられる。

しかし、NISA口座で米国株の配当金を受け取っても、国内の税金は課されないことから二重課税に該当しないため外国税額控除は適用されない。NISAでは外国税額控除を申告できないことから、日本株も米国株も幅広く投資する場合は、投資枠は日本株を優先するほうが節税において有利になりやすい。

NISAの始め方

金融機関に口座開設を申し込む

NISAは口座を開設したい証券会社などの金融機関に申し込むことで開設できる。すでにNISA口座を開設したい金融機関で総合口座を開設している場合は、基本的に書類などを必要としないが、開設していない場合はマイナンバーなどの本人確認書類が求められる。

申請した後に税務署が内容を確認する

金融機関にNISA口座開設を申請すると、申請内容は税務署によって確認される。税務署では、NISA口座は一人一つまでしか持てないことから、二重開設がないかチェックが行われる。基本的には二重開設以外の問題で、NISA口座が開設できない理由はないため、金融機関によっては税務署の確認を待たずしてNISA口座で取引できる即日買付制度に対応している場合がある。

 

投資枠に対応する金融商品を選んで購入する


税務署の確認後、または即日買付制度を利用できるとNISA口座で取引が始められる。成長投資枠、つみたて投資枠では対応する金融商品が異なるため、対応する金融商品を選んで購入する。

NISAを活用するためのポイント

短期よりも長期を前提に投資する

NISAは売却してもその年の投資枠は復活せず、非課税期間は無期限であることから、短期よりも長期を前提に運用したい。また、短期の取引では損失が発生することもあるが、損益通算ができないNISAと相性が悪い。売却すると翌年以降には全体の非課税投資枠が復活するNISAの仕組みから、年単位で運用する長期を前提で考えるほうが有利である。

ドルコスト平均法を利用した積立投資を実践する

NISAは毎年の投資枠が決まっているが、投資枠を消費するタイミングが難しい。損益通算ができないため、損失が発生した場合のデメリットが大きく、慎重に取引するほど購入機会が失われ、非課税投資枠が余ることにつながるからだ。そのため、投資枠を計画的に消費しながら、リスクを分散させるドルコスト平均法に基づいた投資がNISAを最大限に活用しやすい。

ドルコスト平均法は、特定の投資信託・株式に対して常に一定額を定期的に購入する投資手法。つみたて投資枠の非課税枠が120万円であるため、毎月10万円を積み立てれば、ドルコスト平均法に基づいて非課税枠を最大限に消費できる。ドルコスト平均法は、価格が高い時も安い時も一定額購入することで、購入単価を平均化させるため、長期投資においてリスクを分散させられる。

投資先を分散させてリスクを減らす

長期投資で問題になるのは資金の拘束であり、金融商品を売却して資金を用意する必要が出たとき、保有している投資先が値下がりしているタイミングの場合は売却で損をしてしまう可能性がある。

投資先を分散させると、資金を用意するタイミングに保有しているAの投資先は一時的に大きく値下がりしていても、値動きが連動しないBの投資先は上昇している状況が生まれることもあるため、Bの商品を売却して損なく資金を用意できる。

長期投資では一つの投資先に集中して投資してしまうと、リスクが発生する場合もあるため、余裕資金の範囲内で投資することを徹底するだけでなく、いつでも売却できる資産がある状態を理想に投資することを心がけると、不意のトラブルにも対応しやすい。

NISAに関するQ&A

旧NISAから新NISAを始めるために手続きは必要?

2023年までにNISA口座を開設している場合は、基本的には開設した金融機関で新NISAの口座が自動的に開設されるため手続きは不要である。旧NISAで運用している金融商品がある場合は、新NISAとは別枠で一般NISAは最長5年間、つみたてNISAは最長20年間の運用が可能となる。ただし、旧NISAで運用している金融商品を新NISAに移して運用できない。

NISA口座開設後放置するとどうなるか?

NISA口座を放置しても維持手数料がかかることもなく、基本的には口座がなくなることはない。しかし、NISAは年間の投資枠が決まっており、次の年に繰り越すこともできないため、放置することはもったいないといえる。NISAを最大限に活用するなら毎年の投資枠を上限まで使用することが重要。

投資信託であれば1円単位で購入できるほか、金融機関によっては非課税枠を余らせないように注文することも可能。株式は単元で購入する場合は非課税投資枠を上限まで使用することは難しいが、通常は100株単位で購入するところを1株から購入する単元未満株を利用して上限を調整できる。

NISAとiDeCoは併用できる?

NISAとiDeCoは併用して利用できる。すでにiDeCoを始めている人もNISAを始めることが可能であり、NISAだけでなくiDeCoに興味がある場合も、NISAを始めてからiDeCoを後から始めることも可能だ。




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